名鉄小牧線途中下車の旅〜ローカル線型都市近郊路線を行く(2)


小牧線の中心駅、小牧駅

小牧駅の駅ビル。市の中心部に
あり、名鉄小牧ホテルなどが
入る小牧線の中心的な駅。


小牧駅自由通路

小牧駅の東西を結ぶ自由通路。
両脇には店舗が並ぶが…

小牧線中心駅、小牧駅
 小牧口駅を出ると直ぐにトンネルに入りゆっくり走る。小牧駅到着と桃花台線ピーチライナー、岩倉行きの名鉄バスの乗換え案内がアナウンスがされると、間もなく小牧駅に入線した。小牧線の途中駅では利用客、規模共最大の駅で、ローカル線の風情を残していた他の小牧線の駅とは正反対で、2面3線のホームを持つ都市型の駅だ。

 エスカレーターを上り西口に出てみると、小牧市の中心だと思わせる都会的な風景が広がっていた。ここまで来るとさすがに航空機の騒音は小さくなるが、空に飛び立ち小さくなっていく飛行機が見える。周りはビルが林立し、数十メートル先のスーパーや大型電気店とはゆったりとした幅の明るい雰囲気の歩道橋で結ばれている。その歩道橋の上から駅ビルを眺めると、名鉄系のホテルやフィットネスセンターなどが入り、この辺りでは一番高く威風堂々とそびえている。

 だが、昼間という時間帯もあるのかもしれないが、駅西口を行き交う人々は非常に少なく、街の規模に比べれば閑散として活気が感じられなく、建物の立派さや奇麗さにまやかしにも似た印象を受ける。駅東西を結ぶ通路の両側には、10数店の店舗が並んでいるが、やはりそこも閑散として、唯一、銀行のATMコーナーの人の出入りが目立つ。雨が遮れるビル内の通路は格好の自転車置場で、禁止されているにも関わらず柱の周りには自転車が止められている。

 シャッターを降ろし、電気が灯っていない店があり、たまたま今日は休みなんだなと思い覗いてみると、「閉店しました」の紙が貼られ、中はもぬけの殻となっていた。しかも3店が空きテナントで、閉店の張り紙から何ヶ月も前からこの状態だという事が解かる。車社会で不景気の上、小牧線の20分間隔のダイヤと上飯田でレールが尽きる不便さのため、抜群の立地だが、商売になり辛いのだろう。また小牧駅利用客にとっても駅は単なる通過点で、買い物にしても日常の物が揃っている、歩道橋の向こうのスーパーに行くのだろう。小牧線が混雑する時や休日はもっと賑わうのかもしれないが・・・。

 小牧駅東側は、名鉄小牧駅に隣接して、桃花台線の小牧駅があり桃花台線口とも言える。バスロータリーがあるが、先程の東口に比べ、駅前の通路がゆったりとして樹も植えられ、のんびりとした新興住宅地の駅ような開放的がある。

 列車で更に北を目指そうと、再び駅に向ったが、列車は出発したばかりで、あと20分待たなければいけない。上下の列車が交換した出た直後で、3線もあるホームは隅の駅員詰所に駅員がいる以外は、半無人状態で静寂が漂う。時折、人がぽつりぽつりとやって来る気配がコンクリートの地下ホームに反響する。運悪く列車に行かれたその人達は、諦めた風にのんびりと、或いは退屈そうに待っている。トンネル出口からホームが割と近く、外からの強い風がトンネルをヒューヒューと鳴らし、ホームに響かせる。

 やって来た犬山行きの列車は300系ではなく、従来の真っ赤な車両だ。たったの2両と、正にローカル線レベルの編成だが、それでも十分に空席があり、ゆったりと座る事が出来た。

小牧線単線区間を行く
小牧駅を出ると単線になった。地下を出て、狭いコンクリートの掘割に出ると、右横の見上げる高さに桃花台線の高架が現れ、高架の小牧原駅の真上でカーブし東に伸びていた。高架を走る列車の車窓から住宅や店舗が建ち並び牧市市街地が見下ろせる。先程のローカル線的風景と違って街の景色だ。

 味岡駅は高架の2面2線の相対ホームとして作られているが、現在は西側の1面のみしか使われていない。もう片面はレールが敷かれていなく、コンクリートのホームは廃駅同然の姿になり、ただ看板の大型広告スペースとしてのみ使われている。作られてから年月を経ている様で、屋根が無く雨ざらしで古び、おまけに、タイルなどの接合部から雑草や苔まで生えている。元はコンクリートだけで出来ている筈なのに、こんな所に住み着くとは凄い生命力だ。

 味岡駅から先の駅では先は乗車してくる人が多く車内は少し賑わう。犬山や名古屋方面に行くと思われる人々だ。名古屋に行く場合、上飯田を経由するより、犬山で名鉄犬山線に乗換えた方が面倒でないのだ。
田県神社前駅

田県神社前駅。文字通り田県神社まで
徒歩5分と近く、年始などに賑わう。
 小牧-味岡間は単線だったが、味岡から複線用地が確保されている。しかし、複線化の予定は無く、雑草だらけの空地が単線のレールに寄り添いながら続く。虚しく続く複線化用地を眺めながら田県神社前駅に到着した。文字通り、子宝の神社として有名な田県神社の最寄駅だ。ここは西側の1面1線のホームだったが、つい最近、東側にもホームを追加し、交換が可能な駅となった。古く使い込まれた犬山方面ホームと、新しく真っ白と言った感じの上飯田方面のホームがコントラストを作っているようで面白い。大学が近くにあり、学生で駅はそこそこ賑わっていた。ここもやはり、犬山行きのホームで待っている人の方が多かった。

 この駅から徒歩5分の田県神社は古来から男性の一物「男茎形(おわせがた)」を供える風習があり、「生むは産む」という意味に通じて、子宝の他に商売繁盛、交通安全など様々なご利益がある神社だ。特に「豊年祭」が有名で、毎年、檜で巨大な一物「大男茎形(おおおわせがた)」を作り、3月15日に万物育成、世界平和を祈り神輿に載せて、奉納する奇祭で、この近辺はもとより、海外でも有名な奇祭だ。

 国道沿いを南に歩くと、田県神社に着いた。有名な神社だが、この時は車の音が少し耳に付く以外は、閑散とし静かで、地元に溶け込んだ神社の雰囲気だ。時折、手ぶらの地元の人々がお参りに来ている。私もお参りしようと本殿の前に立つと、例の大男茎形が神輿に載せられ鎮座していた。長さ2m以上、幅50cmとかなり大きく驚いてしまう。

 奥の方に回ってみると、新緑に囲まれた短い参道がある。ここに来ると車の音が少し小さくなり、ずらりと掛けられた絵馬が風に揺れ、カランコロンという軽やかな音を鳴らし心地良い。参道の両脇には、奉納された一物、或いは女性器のような形をした珍妙な石が幾つも置かれている。奥には「奥宮」という小さな宮があり、小さな建物の中には大小形様々の木の一物が所狭しと密集していて一瞬、唖然としてしまう。願いが叶った人々が木の一物を奉納しているのだった。

 おみくじを引いてみようと売店に行くと、スーツを着た男性3人が参拝していて、うち一人の外国人男性だ。取引の合間に、海外でも有名なこの神社に案内したのだろう。おみくじを引こうとすると、2種類もあり、なんと片方は英語バージョンも併記された「花みくじ」だった。珍しさも手伝ってそちらを選んだ。私の運勢は「Not so good(末吉)」だった。

 田県神社駅から、犬山行きに乗ると、このあたりは、沿線は畑が多く、小高い山が近くなりのどかな風景となる。相変わらず、右手に複線化用の用地が続くが、沿線の畑が侵食してきたかのように畑と化し、列車が走るスレスレの所で作物が育つ。列車が真横を通り過ぎるのに、農夫はのんびりと腰掛け畑≠フ手入れをしている。名鉄の土地をで不法使用している事になるが、複線化用地として確保してあるものの、着工の予定が無いので黙認しているのだろう。

 楽田駅で、上飯田行きの列車と擦れ違い、羽黒駅に着いた。羽黒駅という名前だったが、明治時代の建物を集めたテーマ-パーク「明治村」の最寄駅だったため、バスに乗り継ぐ観光客で賑わい、昭和41年に明治村口駅と改称された。しかし、明治村行きのバスが犬山行きに変更になると、昭和61年に羽黒駅という名称に戻された。そのためか、駅舎は小牧線の中では比較的大きくしっかりしたもので、少々デザインが洒落ている。駅舎内も割と広く、随分前に閉店されたと思われる寂れた店舗スペースがあり、かつての賑わいを感じさせる。だが、駅前はかつて明治村行きのバスが出て賑わっていたとは想像できない程のスペースしかなく、道は狭く、数店の商店が並ぶ。次の列車まで時間を持て余し、駅をうろつく猫と戯れ、羽黒駅での一時を過ごした。

 ようやく次の列車が来て、乗り込んだ。あと一駅で終点の犬山だ。相変わらず隣りには、虚しく複線化用地が寄り添う。高架の上から、緑の小高い山並みを背景に、住宅や畑が広がっている犬山の町を眺め、少し走ると左手から、犬山線、右手から広見線が近付き、3線の合流点直前、犬山駅を目前に停止した。順番待ちで、名古屋方面に行く犬山線の列車が通り過ぎると、小牧線の列車は再び動き出し犬山駅6番線に入線した。犬山駅は名鉄のレールが四方に伸びる、名鉄の一大ターミナル駅で、夕方の帰宅ラッシュで賑わい始めている。

 私も犬山駅からは小牧線で折り返し、帰宅の途に就く。列車を1本遣り過し、待っていると、またしても300系が入線してきた。まだ、小牧線では他形式の車両も見るが、今日乗った車両はほとんど300系で、帰りの車窓から見ていると、4編成の300系と擦れ違ったので、5編成は投入されている事になる。暫定投入とは言え、もうすっかり小牧線の顔となったようだ。

 名鉄他線から乗換えて来る人々などで、昼間とは違い、上飯田行き小牧線の列車も賑わいを見せている。だが、現状で4両編成の300系では、ラッシュという言葉に程遠くゆったりとしている。でも、上飯田連絡線が開通し、利便性が向上すると、300系は多くの乗客を乗せ小牧線と上飯田連絡線を快走する事だろう。

[2002,5月訪問]
田県神社本殿内

田県神社本殿内。大男茎形
(おおおわせがた)が飾られる。
羽黒駅、かつての明治村前駅

羽黒駅。かつての明治村前駅の
名残で少し洒落たデザイン。
羽黒駅の猫

羽黒駅の植込みの陽だまりで、
猫がのんびりくつろぐ。
犬山駅に到着。折り返し上飯田行きとなる。

犬山駅に到着。四方にレールが延びる、
愛知県尾張地区北部の一大ターミナル駅。

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