旧型国電クモハ42〜小野田線本山支線をゆく(2)


小野田線・本山支線の車窓をクモハ42から見る。

クモハ42で本山支線を行く。
窓を開け車窓と風を堪能。
本山支線へ(続き)
 6分間雀田駅に停車して、定刻の7時3分に長門本山に向けて出発した。見通しが悪いらしく「見通し不良区間」と書かれた標識が目に入る。確かに景色は開けなく、沿線間近に木々が迫り、猫の額のような田畑も見える風景をクモハ42はのんびりと走っている。

 程なくして小野田線、本山支線唯一の中間駅、浜河内駅に停車した。木々に囲まれたような駅周りは民家が数軒という田舎風景だ。1km先にある次の駅で終点のこの列車に乗ってくる人はやはり誰も居なかった。

 浜河内駅を出て少し走ったと思ったら、すぐに減速し始めた。団地も見える景色が開けた所に出て、じらすような停車寸前のようなノロノロ運転が少し続き
長門本山駅のホームに停車した。

 ドアが開くと、列車が来るまでは静かであっただろう長門本山駅は一気に賑やかになる。乗っていた10人程度の鉄道ファン達はカメラやビデオカメラ片手に記念撮影を始め、クモハ42撮影会さながらな状態になった。ホーム反対側の線路横の空地は台車周りもフレームに収めやすい絶好のポジションで、熱心に撮影をする鉄道ファンに混じり、私も写真撮影を始める。

 雀田に折り返すまで僅か6分の停車時間で、出発直前になると、クモハ42は鉄道ファン達を再び車内に吸い込み雀田に折り返した。私は次の列車で帰ればいいや思い、長門本山駅に1人残り、去りゆくクモハ42の姿を見送った。長門本山駅に再び静けさが戻った。

 次の雀田行きは7時42分だ。まだ約30分も時間があり、周辺をぶらぶらする。少し歩くと、空地の向こうに周防灘が広がっていてるのが目に入り、暫く眺めていた。でも、すぐに見飽きた。至近は住宅などがぽつりぽつりとある程度で、これと言った見所も無く、すぐに時間を持て余す。かつては海底炭田の坑口があったというが、今はそれらしき跡は見当たらない。仕方なく長門本山駅周辺を少しうろついたり、ボーっとしているしかなかった。

長門本山駅に到着したクモハ42

長門本山駅に到着。折り返し雀田行きとなる。
長門本山駅の近くには海が広がる

長門本山駅のすぐ側は海。


長門本山駅

クモハ42が去った後の長門本山駅。
かつては写真左側に側線が広がっていた。

 長門本山駅は1面のホームと上屋のある待合所、トイレがあるありふれたローカル線の無人駅と言った感じだ。だが、かつては側線が何本かあったという。先程、台車も入れてクモハ42を撮影する時に立った空地がそうだ。単線のレールが真っ直ぐ伸びないで、長門本山駅進入直前で、ホームに寄り添おうと不自然に曲がっているのはその名残だろう。来る時のノロノロ運転はこのカーブがあったためなのだろう。

 列車が来る時間が近付くと、どこからか制服の女子学生が駅に来て佇んでいる。折り返しの7:42分発の列車を待っているのだ。以前、本山支線は日中の運行もあったが、現在では朝夕の5往復なってしまい不便になったものだ。それだけ利用者が少ないという事だろうが…。辛うじて通学に使える程度で、彼女もさぞ通学に難儀している事だろう。

 定刻に雀田からクモハ42が到着し、12分停車した後に再び折り返した。次の長門本山駅発の列車は何と夕方の17時03分だ。他の地区なら通勤通学で賑わう時間だが、車内はボックスシートを1人で占領できる程空いている。先程の女子学生など数人の地元の利用客がいるが、私のようなクモハ42目的の人の方が多い。

 途中駅の浜河内でも鉄道ファンなど数人を乗せ、通勤ラッシュとは無縁のまったりとしたムードのまま、雀田駅に到着した。これでクモハ42の朝のお仕事は終りで、次の出番は16時27分の長門本山行きになる。それまでは雀田駅でちょっと長い昼寝だ。

 運転席横に「列車ノート」が紐で引っ掛け吊るされているのを先程見つけた。駅ノートは珍しくないが、列車ノートとは珍しい。これも鉄道ファン始め、皆にクモハ42が愛されている証だろう。ノートが空くの待ち、雀田駅に着いて、扉が閉まるまでの短い時間を利用して私も、クモハ42への短いメッセージを残した。

 終着後も車内に残っていたのは私だけでなく、他の列車に乗り継ぐ人々もクモハ42を待合室代わりに車内に残っている。だけど、宇部新川行きの列車が来ると車内には誰も居なくなり、クモハ42の運転士さんが、窓を閉め、扉の鍵を掛けたりして厳重にロックをした。運転士さんは一旦帰るらしく、列車待ちの間、顔見知りの雀田駅の駅員さんと親しげに世間話をしていた。

 私は列車の時間も気にせずにあまりにのんびりし過ぎていたため、ことごとく列車を乗り逃し、一時間近くも雀田駅で時間を潰す破目になった。

[2002,7月訪問]
クモハ42の窓から見た浜河内駅

再び雀田からやって来たクモハ42に
乗り折り返す。本山支線の唯一の
中間駅浜河内駅を窓から撮影。
クモハ42車内にあった「列車ノート」

運転室側にぶら下げてあるノート。
私も一筆書いてからクモハ42に別れ
を告げる。

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