プロロ−グ

 

銀河標準暦555年 シリウス帝国のフェンリル計画を打破してから約4ヶ月・・・

銀河はいつまでも静寂な時を刻んでいなかった。

そして、星界の天使たちの休息も終わりを告げていた。

 

それは一種壮大な眺めだった。そう、この惑星べ−クランドの周回軌道上の宇宙ドックに自由都市連邦軍 第7機動艦隊群、通称メビウスリンク艦隊の旗艦が勢揃いしたのであった。

その中の1隻、クリエムヒルトのブリッジにはこのメビウスリンク艦隊の総責任者のエリ=シェフィ−ルドの姿があった。エリはブリッジの指揮官席ににただ一人いた。

「どうしたのエリ?」その声にふとエリが振り返るとそこにはディ−ト=アッシュが立っていた。

「ディ−トこそどうしたの。」

そのセリフを予想していたかのようにディ−トは答えた。

「新しい私の艦見ておきたいでしょう。エリはもう見たの?」

「まだよ、何かと忙しくてね。」

エリは、シ−トを回転させて体の向きをディ−トのほうに向き直した。

「ディ−ト、特にこの艦は癖もないし素直なものよ。」

「ありがとう、エリ。でも今回は集合命令は旗艦の乗換えだけじゃないでしょう。」

「そうね、旗艦の乗換えだけだったら私と、ディ−ト、そしてコ−ネリアの3人だけでいいはずね。」

ディ−トは長めの赤い髪に手をやりながら答えを考えた。出した結論というより予想できることはエリも一緒だった。

「大規模な作戦行動・・・・。」

そのようなセリフを二人同時に口にした。

「まあ、追って説明があるでしょうから深く考えるのはやめましょう。」

あまりにも簡単に予想できる答えに不安を感じながらエリが言った。

「そうね。時期がくればわかることだし・・・。」

ディ−トにもそのことが伝わったようで語尾を濁した。

554年の帝国側のフェンリル計画を阻止した二人の司令官は互いにこの先の不安を感じつつあった。

「さて、クリエムヒルトの戦闘デ−タ−は新しい旗艦に転送し終わったから行かなくちゃ。」

エリは不安を払拭するように明るい声で言いながら指揮官席から立ち上がった。

「エリ、ところで新しい旗艦の名前は?」

「アルシオ−ネよ。」

指揮官席から立ち上がりながらエリは答えた。

 

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第1章 予感