
あれやこれや
当時の職場は,工場のある広い敷地に間借りするように,本社棟,研究棟など沢山
の建物が建っていました.何れも老朽化が進み,次の大きな地震で木っ端微塵にな
ること請け合い.その木っ端微塵になりそうな3階建ての1階に我々の研究室はあり
ました.もちろんその部屋の主はネコ話の主人公でもある件のIさん.
1階の下は地下室(縁の下).ここには使わない器具類や試料,書類などが雑然と
押し込まれていました.何処に何があるかは突っ込んだ人だけが知っている.必要
があれば50cm×70cm位に切り取った床をはがして飛び下り,用が済んだら床上に
よじ登る.深さは人の背丈位でしたか.床をはがした状態は正に落とし穴.だから作
業をする時は閉めておくべきですが,それでは床下は真っ暗できっと出口が見つか
らず,アイーダのように人知れず地下室でミイラになってしまうかも知れません.つま
り下で作業をしていることを示すためにも床は開いたままにしておくのが習慣でし
た.もう少し付け加えることがあります.隣の部屋へのドアの直ぐ内側にこの出入り
口があったのです.つまり隣の部屋にいる人は床が開いているか閉じているかは分
からない.というか閉じているのが当たり前で,開いていたとしたら正に罠そのもの.
知らずにドアを開けた人の半分はまずこの穴に落ちるでしょう.突然1m以上も落下
すれば骨折は避けられません.こんな危険なことをしていて叱られなかったのだから
古き良き時代と言うべきか.でも,一応の安全対策はしてありました.つまりここで作
業をする時は必ずドアの鍵を掛ける.いわゆるフールプルーフですね.
さて,新人のHTさん.利発でしかもとても素敵な美人.どうやってこのフールプルーフ
をかいくぐってきたのか,穴の中で作業をしていた私の上に落ちてきたのです.突然
上から大きくて変な物(失礼)が落ちてきたのですから私は魂消ましたが,もっと魂
消たのはご本人.石器時代ならいざ知らず,この時代に落とし穴に落ちるシツエー
ションなんて実際にあるのでしょうか? 極めて貴重な体験をしたHTさんは,あり得
べからざる恐怖を味わっただけで,穴の中にノビている哀れな犠牲者のおかげで怪
我一つしなかったということです.ひょっとしたら私の腰痛は亀戸駅で老人を助けた
時(2006.4.1 腰痛)に始まったのではなく,研究室で美人の犠牲になった時に始まっ
たのかもしれないと今気付きました.
後で分かったことですが,HTさんは相当な慌て者でもあったようです.少なくとも私が
知っている限りこの穴に落ちた人はHTさんたった一人でした.今は細かいことには
動じないおおらかなI君(Iさんとは無関係)の奥さんになって,お母さまをやりながら
働いておられます.おっちょこちょいでも主婦は出来る!
今日は,Iさんのネコ話の続きのはずでしたが,縁の下の説明を始めたら別の話に
なってしまいました.本題はまた後日ということで・・・.
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