
あれやこれや
9月15日朝日朝刊の“東京物語散歩”というコラムにしばしばこの欄でご紹介してい
る旧中川,そして通勤路で最後に渡る逆井橋(最初に渡るのは先日ご紹介したふれ
あい橋)のことが書かれていました.小説の舞台にもなったんですね.ただ,私の記
憶が正しければ,小説の舞台である逆井橋は今の逆井橋ではなくその隣の亀小橋
かもしれません.いつの間にか道路整備などで環境が変わり,後から出来た立派な
橋の方に由緒ある名前(大昔“逆井の渡し”があった)を持って行かれて仕方なく亀
戸と小松川を結ぶという意味で元々の逆井橋が亀小橋に変名させられたものと思
います.但し,昔の記憶なので間違っているかも知れません.
さて,今回の新国立劇場は二期会“魔笛”の公演です.この公演はちょっと面白い.
外人の歌手が出ない代わりに指揮は畏れ多くもT.グシュルバウアー.外人の歌手
が出ない・・・・何故ならば台詞が日本語なのです.台詞は日本語でも音楽は極上の
魔笛でした.舞台はウルトラ怪獣のオンパレード.おまけに少々寒い日本語ギャグ
の大サービス.テレビを見ない私には理解不能のコマーシャルフレーズと思われる
キャッチコピーの大安売りに観客は大受けでした.何しろウルトラ怪獣のせいか観
客の5分の1くらいは子供でした.訳が分からずに見た幼い頃のオペラ体験はきっと
良い思い出になったことでしょう.お母さん偉い.
もっとも,訳が分からずにと書いた本人も訳が分からないのです.魔笛はメルヘン.
訳など元々あるはずはありません.だから楽しいのです.ところで,3人の童子の
声.この公演では女性がやっていましたが,今でもその美しさが耳に残っています.
普通は本物の子供がやるのでこれ程美しい合唱だとは知りませんでした.やはりプ
ロはプロです.この3人とヒロイン,パミーナとの掛け合いは子供ではない欠点(誰が
誰だか分からない)が露呈してしまいましたが,音楽の美しさとしては言うことがあり
ません.
あと,魔笛の本当のヒロインは夜の女王.超難曲を2つも歌わねばなりません.しか
も出番はほぼそれだけ.でも今回の女王はワールドクラスでした.ダムラウやデセイ
とタメを張れそうな立派な歌を聞かせて貰いました.いつも同じようなことを書いてい
ますが,これだけでも入場料は安い(本当に安かったのです).夜の女王(名前不
詳)とパミーナどちらがヒロイン? 形式的にはパミーナかも知れませんが,夜の女
王を聴きたくて(見たくて)来た人が半分はいるはず.そして知り合いのソプラノ歌手
から間接的に聞いたのですが,夜の女王は声質が合わなくて結局は歌えなくとも,
これが歌いたくてソプラノ歌手になったといってもよい人が大半なんだそうです.だか
ら安井陽子さんの名演だけでも今回の魔笛は大成功でした.なお,本当のヒロイン
であるパミーナの増田のり子さんの美しい“ああ私には分かる”にはウルウルでし
た.
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