
あれやこれや
ちょっとマニアックな話です.よって音楽に興味のない方には退屈なだけだと思われ
ますのでお許しを.
今日のテーマに入る前に昨日の訂正.“おいアンナ,歌え”と言えるようになったHさ
んと,指をくわえて羨んでいる私との差は根性(と資金)と書きましたが決定的に重
要なことを忘れていました.違いが解る感性.これこそが最大の違いでした.どの分
野でも差がつくかどうかは,違いが解るかどうかにかかっているのだと思います.
さて,下手の横好きで週に1,2回は未だにフルートを吹いていますが,若い頃はフ
ルートよりもむしろリコーダに凝っていました.それが全くといって良いほどリコーダ
を吹かなくなってしまったのはやはり歳のせい.先日,ホコリをはたいて大昔に使っ
たリコーダを出してきて吹いてみたのですが,もちろん腕前は最低ですが,何十年
ぶりかでも素晴らしい音が出ました.フルートの音色は腕前で左右されますがリコー
ダはただ吹くだけですので良い楽器の音は誰が吹いても良い音が出ます.
この楽器は銀座や渋谷,池袋,横浜などいくつもの楽器店で試奏させて貰った末,
つまり何十本という楽器の中からやっと見つけた私にとっては宝物なのです.ただ木
をくり抜いただけのものなので出来の良し悪しは一本一本が違い,しかも大抵はそ
の差が大きい.ドイツのM社という大メーカーの品物は徹底した管理下で製造されて
いるので品質差がないというのが売り物です.確かにどれも立派な音が出るのです
が,ある特定の一つの音の音程だけ標準の指使いではちょっとだけ高くなってしまう
という欠点(?)も共通なのです.その点でも謳い文句は正しいのですが,その楽器
のためだけに標準の指使いを変えるのは不愉快なのでボツ.でも,それ以外には
非の打ちようがない程良い楽器だったので買っておけば良かったという後悔も未だ
に残っているのです.最終的に選んだのがスイスの“キュング”というメーカーのもの
で,音色が素晴らしく美しい楽器です.アンドレア・ロストの鈴を転がす美しい声を彷
彿とさせるような音なのです.見かけだって美しい.紫檀製で頭部管,中部管,足部
管と三つに分割できるのですがそれぞれの木目が通っていて見ているだけでも未だ
にウットリです.象牙の装飾まで施してあり,今時こんな楽器は簡単には手に入れる
ことは出来ないのではないでしょうか.この楽器を買ったのは40年も昔の話です.

伝説の名器
では何故やらなくなったのか.答えは簡単.上手く吹けない.逆に言うとフルートは吹
くだけなら実に楽なのです.音程だって取り敢えずは大雑把に合わせておけば,吹く
時の加減でどうにでもなります.一方,リコーダは弱く吹くと音が下がり強く吹くと上
がるという避けることの出来ない問題があるのです.だからいちいち指使いを工夫し
なくてはなりません.例えば標準的なバロックでは繰り返しが頻発しますが,一回目
はフォルテ,2回目はピアノで奏するのが通常です.つまり同じ部分の繰り返しでも
常に1回目と2回目では指使いが違う(か,気にしないことにする)のです.練習の始
めにこの部分はこれで,この部分はこれでとある程度指使いを決めておかないと気
持ちの悪いことになります.こうした細かい工夫が若い頃はむしろ楽しみだったので
すが,歳と共に億劫になり,ついついインスタントで吹けるフルートしか取り上げなく
なってしまったというのが真相でした.
と,こう書いて行く内に昔の虫が頭をもたげてきてしまいました.今度の連休はリコ
ーダに再挑戦?
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