
あれやこれや
突然の来客時に困るのがロンをどうするか.放っておいたら流血の惨事は必然.だ
から当家の接客ルーチンは,先ずお客様には外でちょっと待っていてもらってロンを
どこかに閉じこめることから始まりました.でも,どこにでもわぁがままものは居るも
ので,勝手に,自分で扉を止めていたフックを外して入られてしまうこともありまし
た.無許可での家宅侵入ですので,犯罪の一種.こんな時は,その報いとして暴力
犬の攻撃を受けるのは当然のことです.でも,幾ら何でも血は見たくありませんの
で,外からは容易に外せないようにしておきました.そうしたら今度は門のカンヌキを
上から手を伸ばして外すことまでやり,オオカミの子孫に血祭りに上げられた間抜け
も居ました.目立つように猛犬注意との張り紙もしてあるのですが,ロンが小さいの
でその“猛”の程度の想像がつかないらしいのです.それとも昔の,しかも田舎での
ことなので,玄関先までは無許可で入る権利が来客にはあるのだと信じている人も
居たような気がします.ロンは例え短足ではあっても,アナグマをハンターの助けな
しで攻撃する銃猟犬なので,そのファイティングスピリットは桁違い.生存競争を武
器を使うことで勝ち抜き,今やひ弱になってしまったヒトなどは問題になりません.
来客の中には玄関先で帰る人もあれば上がり込んで長居する人も居ます.時と場
合によってロンの確保の仕方が違います.応対していない別の家族がロンからは客
が見えないよう遠くで抱いているだけで済むこともありますが,大抵は自分で開けら
れない部屋に閉じこめておきます.この日は折悪しく私一人しか居らず,しかもその
客が無謀にも玄関までロンの目をかいくぐって入ってきてしまったのです.私が必死
でロンを抑えなければ家族の留守中に血まみれの惨事が引き起こされるのは必定
でした.後から思えば心ゆくまでロンの本能を満足させてやれば良かったと思いま
す.菓子折と治療費だけでロンにあんな思いをさせずに済んだのですから.
その客が誰であったかは覚えていませんが,直ぐ帰ったので小包配達の郵便屋さ
んあたりだったのでしょう.ロンを解放しようと閉じこめておいた風呂場へ戻ってビッ
クリ.水を張った浴槽の中でアップアップジタバタジタバタしているのです.もう少し客
に長居されたら溺れ死ぬところでした.大あわてでタオルをかき集め水を拭き取って
コタツに入れてやりましたが,なかなか震えが収まらず心配しました.結局風邪も引
かずこの時も何とか無事に収まりました.
では,何故水風呂に.風呂場の戸を閉める時間を稼ぐために風呂桶の蓋にロンを
乗せたのが失敗の原因だったのです.迎えに行くまで不安定な蓋の上からは降りら
れないと甘く考えていたのが考え違い.じっとしているロンではありませんでした.桶
に水が張ってあったのが幸いで,寒い思いはさせてしまいましたがそれだけで済ん
で良かった.水がなかったらと思うとゾッとします.それにしても,口には出しません
でしたが,ロンはこの時のことを思い出す度に腹を立てていたのではないでしょう
か.
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