島崎藤村の見た樋口一葉

  <正直に言えば、私は女としての一葉をあまり好まなかった。>

                                 十川信介 編 『藤村随筆集』 (岩波文庫)

   しかし藤村が一葉の文学を評価していることは、上記随筆集の「故樋口一葉」 と 「偶像の破壊」 にあきらかである。

   ひるがえって一葉の日記には、藤村が訪れて来たこともその風貌も噂も記していない。 川上眉山の男振りに筆を尽くした中の眉山の用向きの話として二度その文字が出てくるだけである。  (追記: なお、この二人はおない年である。)