旅先で出逢った犬達

私は犬が大好きで、旅の途中で犬を見ると、つい頬の辺りが緩んで「よしよし」などと、よく
声を掛けてしまいます。吠え返されるのにも懲りずに…。そして、時にはそんな犬達に
レンズを向けてしまいます。ここでは旅で出会った素敵な犬達の写真を何点かお見せします。

八年前の子犬は…
　1989年7月に利尻グリーンヒルユースホステルに宿泊した時、愛らしい雑種の子犬がいた。ホステラー（宿泊者）の人気者で、私も遊んでもらった事は思い出の1つとなっている。
　8年後の1997年8月、再びグリーンヒルユースホステルに訪れた私に激しく吠えてくる犬がいた。8年前のあの小さく愛らしかった子犬だ。あのころころして小さかった奴が大きくなり、すっかり成犬の風格を身に付け、生意気にも私に吠えてくるようになった（笑）。

勇ましく
　冬の美瑛を歩いた。静かでザッザッと自分が雪を踏みしめる音だけが耳に入ってくる。その静寂を破るかのように、放し飼いの白い小さな犬が吠えながら猛然と突進してくる。少し離れた所で止まり、さらに私を威嚇するように吠える。
　だが、精一杯の甲高い鳴き声を張り上げ、犬には悪いがむしろ可愛らしく微笑ましくさえ思う。こんなかわいい犬に私は声を掛けずにいられない。「よしよし」と声を掛けて少し近づいた。すると小さな犬は素早く後退し、一定の間隔を置いて、振り返り先程と同じように吠える。私はまた近づいてみる。また後退し私に吠える。勇敢にも不審者を追っ払おうとしているのだが、恐い気持も抑えられないようだ。でも調子に乗っていると本当に噛まれかねないので「バイバイ」と別れの言葉を掛け先に進んだ。

オホーツク海に一番近い駅で
　ある時、オホーツク海に一番近い駅として有名な北海道の北浜駅にいると、中型の雑種犬がうろついていた。捨て犬という雰囲気ではなかったので、放し飼い同然で駅まで散歩に来たのかも知れない。
　警戒しつつも私は恐る恐る声を掛けながら近寄ってみた。私の警戒をよそに、雑種犬の方からも私に近づき、身をすり寄せ甘えるような仕草さえしてくる。私が触ると、手に鼻を絡めるように押し付けて臭いをかいでくる。さらに駅舎の中に入ろうとすると一緒にいたいといわんばかりにまとわり付いて来る。人懐っこくかわいい犬だ。でも、もしかしたらこの子は寂しいのではないかと思えてきて、なんだか哀れになってきた。
　相変わらず後を着いてきて身をすり寄せる犬から後ろ髪引かれる思いで列車に乗り込んだ。

水郷のほとりにて
　福岡県の城下町柳川市は町じゅうに掘割の水郷が通じ、その長さはなんと470ｋｍもの長さになるという。水郷を史跡を通りながら巡る「ドンコ舟」は柳川の観光名物の1つだ。
　私は1人でドンコ舟に乗るのがなんとなく気が引け、水郷沿いに歩いていた。長さ470ｋｍだから、ドンコ舟が通る所はごく僅かで、普通の住宅が並ぶ中を華やかにではなく、あたりまえのように水路が通っている。
　裏道を歩いていると水郷のほとりに、シェパードらしき大きな犬が放し飼いのまま大人しく座っている。1人で(?)のんびりとしている様子で、彼がいつもくつろいでいるお気に入りの場所なのかもしれない。

臼杵市で
　大分県の臼杵の石仏を見た後に、臼杵市街地を歩いて観光した。通り道の家の横に紐で繋がれた雑種犬が縄張りに侵入してくるよそ者の私に激しく吠える。周りには、犬小屋、毛布、水桶、ご飯用の茶碗など彼の生活を垣間見ているような佇まいだ。
　彼の家の前を通り過ぎ、吠えられても嬉しそうに話し掛けて来た縄張りの侵入者に、彼は訝しげな目を向けていた。

（注）これは置物ではありません。
　フランス、リヨンで世界遺産に指定されている旧市街の石畳の路地を歩いていると、道の先に3匹のシェパードが紐に繋がれずでんと居座っている姿があった。黒く大きな体で精悍な顔つきの犬は、そこに居るだけで周囲を威圧しているように見え、しかも繋がれていなく、犬好きの私もさすがにびっくりし恐さを感じた。シェパードといえば警察犬にされる程、勇猛で強い犬だ。そんな犬3匹に跳びかかられたら成す術も無い。路地は広くないので、このまま進むと数メートル以内に近づく事は避けられない。他の道を行こうかと考えた。
　しかしヨーロッパは概して犬のしつけが行き届いていて、他人に吠えたり跳びかかったりしている犬はまずいないという事を思い出した。恐る恐る先に進み、犬達から離れて歩くが、彼らは私を気に留める様子はなく相変わらす大人しい。そして3匹のシェパードの横を無事通り抜けた。やっぱり犬達は賢かった。
　少し離れた所で3匹の様子を見ていると、店の中から出てきたご主人の後に付いてその場を離れた。

　下の写真は旧市街で見つけたあるバーの看板。その店の名は絵の通り「the smoking dog」。

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