復刻国鉄色-夜行快速ミッドナイトの旅


国鉄色の夜行快速ミッドナイト

札幌駅で出発を待つ函館行き
夜行快速列車ミッドナイト。2001年12月
からは一部に国鉄色の183系気動車を
充当。かつては、キハ27を改装した
専用編成で運行されていたが、2000年
12月からは183系気動車での運行に。
復活!国鉄色183系気動車
 JR各社では、国鉄時代の塗装が復刻されたり、今は無き懐かしい列車がイベントとして各地で復活運転されるなど、懐古列車がちょっとしたブームで、鉄道ファンなどを喜ばせている。JR北海道も例外ではなく、懐かしい列車がいくつも復活運転された。

 JR北海道の一昔前の主力特急型車両で、今もなお活躍する183系気動車の中で、初期に製造された0番代の4両が国鉄時代の塗装にされ、イベント列車などに使われている他、2001年12月からは札幌-函館間の夜行快速列車ミッドナイトにも投入されている。たいてい復活運転の列車のチケットはすぐ売り切り、入手困難となっているが、夜行快速ミッドナイトは青春18きっぷ有効期間中の運転ということで、運転日数は多く、きっぷの入手は比較的容易だ。快速列車のため運賃だけで乗車でき、指定席の場合は+300円必要だが、料金がお手頃なので嬉しい。

 ただ、上りか下りの片方が国鉄色で、もう片方が通常の塗装なので、”国鉄色”夜行快速ミッドナイトに乗れるかどうかは運次第の面もあり、情報収集も欠かせない。情報収集の結果、どうも私の乗る日は通常塗装の方らしい。念のため2泊、夜行快速ミッドナイトに乗る予定を立て、自分の目で確かめた上で翌日、国鉄色の方の始発駅に向えばいいさと思い、あえて予定はそのままにしておいた。

 そして当日、函館駅で目にしたのは何と国鉄色の方!情報を読み違えていたのかもしれないが、3両の国鉄色の車両を目の前にでき幸運だ。だけど、何故か函館方の1号車だけは通常の薄紫色の塗装だった。

函館行き夜行快速ミッドナイトの旅
 23時過ぎに函館行きのミッドナイトに乗るため、札幌駅の7番ホームに上がった。空気が冷たいが、震える程でもなく、3月の割には暖かい。引っ切り無しに列車が発着する札幌駅のホームは、この時間は終列車の時間が間近で閑散としている。ミッドナイトが入線する7番ホームも待つ人がまばらで、1号車自由席の札の下で並ぶ人も数人と少ない。

 出発の約30分前と早めに夜行快速ミッドナイトは7番線に入線してきた。全普通席の4両編成で、私は4号車指定席、レディースシートで一夜を過ごす。シートは以前と変わらない数段階にしかリクライニングできない簡易リクライニングシートにモケットを変えたものだ。前の席の膝のあたりの位置に、ドリンクホルダーが設置されているのが目新しい。出発まで十分時間があるので、とりあえず自分の席に荷物を置きカメラを持ち外に出た。

 昨日、函館駅で見たにも関わらず、赤と肌色のツートンカラーの国鉄色の183系気動車を目の前にし気分が高まる。運転室横には描かれたものではあるが国鉄のロゴ「JNR」のマークも復刻され、「顔」の細かい装飾も再現されている。ヘッドマークは最近よく見られる電飾式や小さめのものでなく、緑色でシンプルなイラスト(駒ヶ岳か函館山?)と「MIDNIGHT」と書かれた大きめのヘッドマークだ。様々な図柄のヘッドマークを付けた国鉄の特急に憧れ、胸躍らせた幼い頃を思い出す。

 何故か1号車だけが従来の薄紫色の車両で調和を乱している気がし、少々残念だ。それでも国鉄色が編成の4分の3を占める光景は壮観で、国鉄時代に戻ったような懐かしさを感じる。

 外から車内を見てみると2、3号車は283系気動車と同型の座席に取り替えられ、座り心地は改善されている。283系では丹頂をイメージしたシートの上部隅にある赤い取っ手がワンポイントだ。

 従来の塗装の1号車は自由席で、こちらが先頭になる。だが、何の変哲も無さそうに見えるこの車両は通常の車両でなく、特急「オホーツク」に連結された事がある「ちゃいるどサロン」付きの車両だ。客室の3分の2程度がモケット未交換の簡易リクライニングシートの座席で、残りがカーペット敷きのちゃいるどサロンとなっていて、子供のスペースらしく奥でドラえもんが微笑み乗客を迎える。このスペースは本来の目的を果たさないが、夜行では横になって移動できるありがたいスペースで、早速陣取っている乗客もいる。キハ27の頃の快速ミッドナイトは、このようなカーペットカーも連結され、人気が高かったが、183系になって通常の座席に戻ってしまった。だが思わぬ所でカーペットカーも復活していたものだ。

 見学も程々にし自分の座席に戻って出発を待つ。出発時間が近付くが4号車の乗客は数人にしかなっていない。夜行で女性専用のスペースが出来るのは安心で嬉しいが、ここまで少ないと帰って申し訳無い気がする。結局、4号車女性専用車の乗客は数人のまま、夜行快速ミッドナイトは真夜中の闇の中に駆け出した。

 白石、新札幌、北広島とこまめに停車し乗客を集めるが4号車には誰も乗って来ない。そのため車掌さんが「もうたぶん誰も乗ってこないから、広く使って下さい」と気を利かし乗客に伝える。遠慮無く席を向かい合わせにし、足を伸ばしながら、夜の車窓を肴に寝酒の白ワインを少しずつ口に含む。間もなく減光され室内が暗くなると、暑くて脱いだセーターを丸め枕代わりに横になった。道内でこうして座席で横になって寝るのは久し振りで、寝づらい姿勢に懐かしい旅の感覚が蘇る。千歳に停車したのはおぼろげに記憶しているが、その後ははっきりしない。
 
快速ミッドナイトの4号車は女性専用席

最後部4号車は女性専用車の
指定席となっている。
4号車のシート(183系気動車0番台)

4号車のシートは簡易リクライニングシート。
モケットは丹頂の模様が入る薄紫色。
快速ミッドナイトの1号車の一部はカーペット敷き

函館方の1号車自由席だけは国鉄色で
はなかった。だが、カーペットのコーナー
があり横になって移動できる。

国鉄車に揺られながら、今宵の寝酒を

国鉄型車両に揺られながら
夜の車窓を肴に寝酒を・・・。
深夜帯では主要駅に停車していき、函館に早く到着し過ぎないため東室蘭では45分、長万部では61分もの長時間停車をする。どうせあまり眠られず目が覚めるから長時間停車を利用して写真でも撮ろうと思っていた。しかし、疲れが溜まったせいか、非常に良く眠れ、東室蘭、長万部の停車中には目が覚めたが、寝ぼけ眼で「めんどくさいからいいや」と思いつつ横になった。

 5時過ぎに目が覚め、カーテンを開け外を見ると海沿いを走っていた。夜が明けつつあるのに、雲が多くどんよりとしているが、眺めはまあまあで、恵山の方が近くにあるかのように見える。

 森を5:42分の定刻に出ると、次は終点の函館だ。左手に見えると思っていた駒ヶ岳が見えなく、林の中を走っている。もしかしたらと思って反対側の車窓を見てみると冠雪した駒ヶ岳があった。近道の大沼公園経由ではなく、海沿いの通称「砂原線」を走っていたのだ。時刻表を見ると、砂原線に通過を表す「レ」マークが並んでいる。地図を見ると海沿いに見えるが、複雑な地形の山林の中を行き、道路を眼下に見下ろす場面もある。

 外をボーっと見ていると東北、上越新幹線の200系新幹線が唐突に目の中に飛び込んで来て驚かされる。同時に駅のような物を通過した。これは4月27日に開業する「流山温泉駅」だと頭に浮かんだ。流山温泉はJR北海道自らが開発、運営する日帰り温泉施設で、同時に駅も開業する。設備はかなり出来上がっているようだった。将来はキャンプ場などのレジャー施設も完成する。

 トイレに立ったついでに車内の様子を見て歩いた。がら空きかと思っていたが、禁煙の3号車指定席は2席に1人の割合に乗客がいてまあまあ繁盛している。だが、喫煙の指定席2号車の乗客は数人とかなり空席が目立つ。近頃は禁煙車が好まれる傾向があるとは言え、ここまで差が出るのは驚きだ。自由席の1号車は満員ではないが、半分以上の席が埋まっている。奥のカーペットでは数人の乗客が夢心地に寝転がっていた。全体では大雑把に見ると3割程度の乗車率と少々寂しい。高校などの春休み前としてはこんなものだろう。

 遠くに函館山と函館の街を眺めながら函館市に入り、沿線に住宅が増えていく。優等列車も多くが停まる五稜郭駅を通過し、車両基地の横を走り、定刻の6:30分に函館駅に着いた。大掛かりな工事中で、ホーム端が行き止まりのガラス張り通路となり駅舎に続いている。青函連絡船に続いていた跨線橋と、0、1、2番ホームは取り壊され、変わりゆく函館駅を目の当たりにした気分だ。だが、背後には、函館駅を見つめるように、函館山が変わらずにそびえていた。
[2002,3月乗車]


函館に到着した夜行快速列車ミッドナイト

工事中の函館駅に到着した夜行快速ミッドナイト。
国鉄色183系気動車は次回の全般検査(4年に1度
の大掛かりな検査)までは国鉄色のままとの事で、
気になる方はお早めのご乗車、ご見学を。

 前日の札幌行き夜行快速ミッドナイトの車窓から

夜行快速列車ミッドナイトから見た夜明け  漆黒の闇だった空が、群青色になり、その黒く濃い青色は少しずつ明るくなっていく。そして遠く東の彼方が赤く染まり、夜明けを告げる。
朝日が街を染める中、札幌を目指す夜行快速ミッドナイト  暖冬のせいで、青森や道南では、雪は思いの外少なく、函館の町中に至っては全く雪を見なかった。だけど、快速ミッドナイトで北上すると、例年より少ないとは言え、車窓の外は真っ白の雪景色で、ようやく北国に来たという実感が湧く。

 真っ白になった札幌近郊の街を、朝日が強く照らす。眩しい街の風景の中、夜を徹し走った快速ミッドナイトは札幌へラストスパートを掛けた。

快速ミッドナイトは2002年11月30日を最後に廃止されました。


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