ドリーム交通・ドリームランド駅


 ドリーム交通(株)のモノレール線は1966(昭和41)年5月2日に遊園地「横浜ドリームランド」への足として、大船駅−横浜ドリームランド間の5.3kmが開業した。だが車体重量超過と、橋脚の強度といった安全性の問題が発覚し、開業から1年と少し経った1967(昭和42)年9月24日以来、休止を余儀無くされていた。だが、廃線ではなく、あくまでも”休止線”で、路線は依然として残され続けた。
 1982年(昭和57)年には、ドリーム交通のモノレールは、ダイエーの子会社「ドリーム開発」に事業権が譲渡され、途中駅を設置し、公共交通機関としての運行再開が計画された。1990年代には、HSST(常伝導磁気浮上式リニアモーターカー)、或いは小型モノレールでの運行が計画され、運行再開の時期も示された事もあった。だが、そんな夢は実現されないまま、軌道などドリーム交通のモノレールの施設は廃線跡のように佇み続けた。
大船駅前の軌道跡(廃線跡?)

大船駅前のドリーム交通の軌道。
休止線(訪問時)だが、駅舎は既に
無く廃線跡同様の雰囲気。
 11月のある日、ドリーム交通の休止線の様子を見ようと、雨の大船駅で降り立った。少し歩くと、宙でカーブを描きながら伸びている細長いコンクリートが唐突に目に入る。ドリーム交通のモノレール軌道だ。駅舎も長期間残されていたが、取り壊され、コンクリートの軌道だけが、未だ駅前の一等地に取り残されている。大船駅側の軌道下は駐車場になっていて、多数の車が止まり、橋脚には駐車場をアピールする垂れ幕のような広告が掲げられている。そして、少し先に歩くと、軌道は急な地形に茂る木々の中に突っ込むように消えていた。ドリーム交通のモノレール線は休止線(訪問時)だが、30年以上も運行されていなく、実質的に廃線状態と言っても良く、廃線跡同様の雰囲気を醸し出していた。
 そこから先も、軌道は残っているとの事で、辿り歩きたかった。だが、ここまで歩いただけでも、ジーンズの裾や靴が濡れる雨の強さで、残念ながら断念した。しかし、ここまで来たからには、責めてドリームランド駅は見ておきたいと思い、駅前からドリームランド行きのバスに乗り込んだ。

ドリームランド駅跡

ドリームランド駅跡。まるで廃駅の様…。

 起伏のある地形の中をバスは走り、まるで山にでも向うような気分になる。道は片側一車線で、雨のためか混み、進みが遅い。ノロノロ運転に眠たくなり、いつになったらドリームランド駅に着くのだろうと思いながら、ウトウトしてしまう。
 40分程経ったら団地の風景の中にコンクリートの軌道が現れ、バスは沿うように走った。坂を登り切り、横浜銀行の駐車場裏の雑木林のような中に、一目で駅跡と解るモノを発見した。ドリーム交通の終点、ドリームランド駅跡だ。
 バスを降り、早速その場所を目指した。駅は30年以上も使われていないく、手すりの錆びなど、古さが目立つにも関わらず、駅としての原型をよく留めている。ただ、30年の時の流れは、周りの風景を自然に帰したかのように、木々がよく茂り、山中の駅を連想させる雰囲気だ。ホームに上がる階段には、ロープが張られ、上がった所にはホームを塞ぐようにプレハブ小屋が居座っていた。
ドリームランド駅ホーム

ドリームランド駅ホーム。
 プレハブ小屋に人が居るのではと、恐る恐る横を通る。誰も居ないようで、ホッとしながら通り抜けると、そこには1面1線の駅のホームと解る建築物があり、コンクリートのレールも敷かれたままだった。
 天気が悪いせいもあるのだろう。今も残る上屋と、軌道を侵そうとするように茂る木々が、まるで光がホームに入り込むのを拒絶しているかのように覆い被さり、薄暗く、気味悪くさえある。上屋の鉄柱も錆び爛れ、軌道の敷かれた溝には落ち葉や枯枝、果ては廃自転車などのゴミもさえも捨てられ、まるでゴミ捨て場だ。まさに廃墟、廃線跡の光景だ。
 暗いホームを端の方まで歩いてみると、さすがに少し明るくなる。だが、木々や植物がホームや軌道など駅の構造物を支配し、密林の入り口に来てしまったかのような感覚を覚える。かつては、この先に車庫があったとの事だが、とうの昔に取り壊されたそうだ。

ホーム端

ホーム先端。まるで密林…
ドリームランド駅ホーム

大船寄りに歩く。右のレールに木々
が覆い被さる。
 今度はプレハブ小屋の反対側の、ホームの大船寄りを見てみる。上屋が無いお陰で、普通の雨空の明るさで、気味悪さは無い。だが、木々は相変わらず旺盛に茂っている。雨はホームのあちこちに水溜りを作り、尚も打ち続け、朱色や山吹色の枯れた落ち葉が辺りに散らばり、駅跡は秋の色に彩られる。殺風景な廃れた駅で、思いがけず秋の雨の日の風情を愉しむ。
 ホーム上には黄色い線や、乗降扉の位置を示す白線も未だに残っている。駅名標が掛けてあったと思われるポールは赤黒く錆び、白いペンキを僅かに残しながら佇んでいた。
 暫くドリームランド駅でぶらぶらしていたが、その間、忘れ去られたようなこの空間に足を踏み入れた者は、私以外にはもちろん誰もいなかった。


駅名票掛け?

ホームに佇む錆びたポール。
駅名標が掛けてあった?
ドリームランド駅近くの廃線跡

ドリームランド駅付近の軌道。
 ドリームランド駅を離れ、大船側に向って軌道沿いを少し歩いた。休止後に建った建物もあるのか、軌道は民家など建物すれすれの場所も通り、木々も間近に茂る。そして、軌道は緑の木々の中に吸い込まれるように消えた。

[2001,11月訪問]

 2002年に入り、ドリームランドモノレールを巡る状況が大きく変わる。まず、2月にはドリームランド自体が閉園となり、36年の歴史に幕を閉じた。
 
 ドリーム交通のモノレールを引き受けたダイエー側も、経営不振のため事業の再構築が迫られていた。そして、不採算と見込まれたモノレール事業の中止を決め、ドリームランドのモノレール復活の道は絶たれた。これからは残った軌道跡も早めに撤去する予定だという。横浜市に化石のようにうねっていた、5.3kmものコンクリートの塊が姿を消す時が来た。

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