白黒フィルムの現像は、道具さえ揃えれば簡単です。
最低限、次のような道具と薬品をそろえれば白黒フィルム現像ができます。
2015年12月8日現在の某家電量販店の価格を調べてみました。初期投資で15000円くらい、15年前より多少お高いのと選択肢が少なくなってますね。
それでも、写真屋さんで現像代1本590円とすると15000円で25,6本分、
コダックのT-MAXだと1本1000円くらいなので、15本分で元がとれそうです。
ハサミ | フィルムを現像タンクのリールに巻くときにフィルムの端っこを整形する為に使います。100均のハサミでもよい | 108円 |
チェンジバック | 普通の室内でフィルムを現像タンクのリールに巻き取る作業に必要なもの。 | 3930円 |
フィルムピッカー | 撮影済み35mmフィルムをパトローネから出す為の道具 | 1160円 |
現像タンク | 種類は色々ありますが、LPLのステンレス製タンクが小さくて使いやすいと思います。 僕が持っている現像タンクは蓋もステンレス製ですが、製造中止のようで蓋がプラスチック製になってしまったようです。 なのに値段が上がってる! | 5470円 |
温度計 | 現像中の温度管理には必要でしょう。15cmと30cmのものがあるようです。 長いと保管や取り扱いに気を使いますが、30cmの方が使いやすいと思います。 (薬を溶かすときのかくはん棒にもなります。笑) | 691円 |
ポリビン(650mL) (2L) |
各1個、現像液と定着液の保存に使います。 | 185円 349円 |
メスカップ(2L用) | 現像液や停止液、定着液、水滴防止液を作るときに使います。 | 772円 |
フォトスポンジ | 無くてもなんとかなるけどフィルムの乾燥時に水滴のふき取りに使うと早く乾かせます。 Sタイプだと表裏に2個はさんでふき取りますが、Wタイプなら1個を折り曲げてフィルムを挟めるので便利です。 | 624円 |
フィルムクリップ | フィルムを乾燥させるときぶら下げるために使います。2個ペアで使います。 | 1404円 |
ネガアルバム 台紙(10枚入) |
フィルムを保存する為のカットしたフィルムを入れるケース。 その昔、写真屋さんで現像してもらったとき入れてくれたような、 厚紙の外装に硫酸紙のケースというものはもうありません。 とりあえずネガアルバム用の張替え台紙だけを買って入れるのが経済的です。 因みにフィルムケースが残っていれば、 フィルムを切らずに長いまま巻いてフィルムケースに入れて保存する方法もあります。 | 340円 |
計15033円 |
現像液のスタンダードと言えばD-76。
最初のお勧め現像液はナニワのND-76です。D-76相当の現像液で市販品では最安の現像液です。
私が主に使用している現像液はミクロファイン、T-MAX Developer、マイクロドールX、D-76、E-76、DP-76です。
ミクロファインは以前は1袋600mLでしたが、現在は1Lになってしまったので、
半分ずつ量りとって500mLずつ溶解して使っています。これで1回5本分程度の現像ができます。
D-76、E-76、DP-76は成分の薬品を自分で量りとって調合しています。
これらを調合するには、メトール、ハイドロキノン、亜硫酸ナトリウム、
ホウ砂、臭化ナトリウム、アスコルビン酸、フェリドンといった薬品を集める必要があります。
また秤量のために、天秤ハカリか電子ハカリ、薬包紙、薬さじが必要になってきます。
電子ハカリは1g単位の料理用のものでも使えなくはないと思いますが、フェリドンやブロムカリを正確に量りとるのが難しいと思います。
ただ、0.1g単位まで量れる機種だと12000円前後とちょっとお高いです。
ナニワ ND-76 1L ¥370
富士フイルム ミクロファイン 1L 319円
コダック D-76 デベロッパー 1L 630円
コダック T-MAX デベロッパー 5L 2600円
イルフォード ID-11 1L 918円
ナニワ カリ明バン 500g ¥650
ナニワ 酢酸 [220ml] ¥640
ナニワ 無水亜硫酸ソーダ 500g ¥870
ナニワ 無水炭酸ソーダ 500G ¥980
ナニワ メトールサン 25g ¥1,020
ナニワ ハイドロキノン 50g ¥1,020
ナニワ 硼砂 500g ¥1,280
ナニワ ブロムカリ 50g ¥1,710
マイクロドールーXデベロッパーも在庫限り終了だそうで、既に売り切れの店ばかりで、もう入手不可能のようです。
調合用のフェリドンが見当たりません。PQ系の現像液の自作が難しくなってきましたね。(汗)
1%酢酸溶液:氷酢酸13.5mLを水1Lに溶かす
氷酢酸を買い揃えたものの臭いので使っていません。
停止液の目的は現像の停止と、定着液に現像液が混入して定着液の寿命が短くなるのを防ぐ目的とのことです。
現像液を現像タンクから出したら直ぐに水を注ぎ現像液を洗い流してしまえば、酢酸を使う必要はないと思います。
2003.12
出雲天文同好会の方からクエン酸を停止液に用いる処方があるとのメールを頂きました。
作り方:
クエン酸 15g
水を加えて 1000mL
ついにフジフィックス、スーパーフジフィックスの粉を溶かすタイプの製品がなくなって
液体希釈タイプだけになってしまいました。買出しのとき重いです。
コダックのフィクサーならまだ粉で売ってますね。
Kodak Fixer 1GAL(3.8L) 900円
富士フィルム スーパーフジフィックス-L 3L/4L 1000円
代替の自家製定着液を考案しました。DIY店で売っている金魚の飼育用水のカルキ抜きにつかうハイポ
(チオ硫酸ナトリウム)と、スーパーで売っているナスのヌカ漬用食品添加物のミョウバン
(主成分は硫酸アルミニウムカリウム)を利用します。
Kodak Fixer F-10(酸性硬膜定着液)改
【処方】 | ||
水(35℃) | 500 | mL |
ハイポ | 330 | g |
ホウ砂 | 33 | g |
氷酢酸 | 19.5 | mL |
ミョウバン | 22.5 | g |
水を加えて | 1000 | mL |
※上の処方で作った定着液は、食品添加物のミョウバンが純粋な硫酸アルミニウムカリウムの単品ではないため白濁しています。
定着効果やフィルムベースの透明度に影響はないようですが、気になる人は写真用カリミョウバンの使用をお勧めします。
ホウ砂と氷酢酸は定着液のpHを安定化させて銀の溶解度が下がらないようにして効果を長持ちさせるための成分です。
試しにハイポとミョウバンだけで作ってみましたが、目に見えて効果が落ちるようには見えず、普通に使えました。
ただし、長く使っていると銀が析出して黒い粒子が浮遊するようになるため、
もし水洗いでもこの粒子が落ちずにフィルムに付着したまま乾燥工程をやってしまうと、
フィルムのキズや汚れをつける可能性が高くなるので注意が必要です。
無くても良いのですが、これを使わないとフィルムを乾燥させた後に水滴跡が残ることがあります。
要は水滴が粒上に残って乾かないように何らかの界面活性剤を使えば同じような効果が出るはずです。
ドライウエルの代わりに食器洗い洗剤を数滴入れた水にネガくぐらせてから乾燥させれば、
水滴跡が残りにくくなるかと思います。
通常、ネオパンSS、100アクロス等の比較的感度の低いフィルムで、
解像度の高いきめ細かな画像にしたいときに使用します。
Tri-XやT-MAX、T-MAX400のデータは当然のことながらフジフイルムからは公開されていません。
ネオパン400がTri-Xのコピーという位置付けとのことなので、Tri-Xをネオパン400のデータで試したところ
問題なく現像できました。
D-76より粒子が細かく、現像時間を長めにしても暗部のかぶりが出てこないので、
厳重に時間を守って現像しなくても良くて楽です。
T-MAXの場合はD-76の現像時間が似通っているネオパンSSの現像時間を参考に試したところ、
実用レベルの結果が得られました。
ただしT-MAX400の場合は明部が適正な濃度に対して暗部の結像が非常に薄い画質になります。
普通に印画紙に焼いたらとんでもない硬調画像ではないでしょうか。
AGFA APXとの相性がよく、特にポートレートでモデルさんの肌のトーンが明るく滑らかに再現します。
ブロニー判のAPXは安くて良い結果が得られるので、好んで使っていました。
残念なことに2008年頃ディスコンになってしまい、AGFA APX - FUJIFILM microfine処理は幻の組み合わせになってしまいました。
(2015年時点、35mm判だけ別の会社が再生産しているようなので、再現できる可能性があります。)
D-76は、フィルム現像液のスタンダード。この現像液さえあればほとんどの白黒フィルム現像はできると思います。
水で2倍希釈して低温でじっくり現像するとかなり微粒子の仕上がりになりますが、
露出不足のコマは軟調でかぶり像になるので、曇りや日陰で撮ったフィルムの現像には向かないと思います。
E-76は、D-76のハイドロキノンをアスコルビン酸(ビタミンC)、メトールをフェリドンに置き換えたものです。
ネオパンACROSのE-76処理は、人物の肌のトーンがAGFA APXのミクロファイン処理と同様の上がりになって
良い結果が得られます。
DP-76は、D-76のメトールをフェリドンに置き換えたものです。
特性はD-76と殆ど違いわないように見えます。
現像液の疲労が少なく4本目くらいまでは時間を変えずに現像できるので便利です。
暗室百科(写真工業出版社)に載っている処方のとおり調合したものを使ってみました。
35mm版フィルムでは粒子が荒れる傾向が強いので、使わないほうが無難です。
現像力がD76より長持ちするので、中判をなら粒子の荒れを気にせず1回の薬液で6~8本まとめて処理できます。
お得な処方という気がしますが、AGFA APX400はID-68の方が良いトーンに仕上がりました。
前述のとおりAGFA APX400をID-68で処理すると人物の肌のトーンがキレイに仕上がりますが、
粒子がD-76よりも目立つ感じがします。
現像力がPQ系だけあって、一度に6~8本まとめて同じ処理時間で現像できる便利さは見逃せません。
ただ、最近はフィルムを湯水のように使える状態ではなく、大量処理しないので、
丁寧な現像をするなら、この現像液を選択する理由は見当たりません。
現像時間が短くて済むので便利な反面、処理時間がシビアで非常に気を使います。
20℃と24℃では温度の粒状性への影響が少なく、高温で荒れるという感じもなく、
フィルムの感度に応じた粒状性に仕上がるように思います。
T-MAXとの組み合わせのラチチュードの広さには驚きで、これなら露出失敗のケースはほとんどカバーできると思います。
だからと言って適当な露出では意図した通りの美しいトーンは出ないので、
より良い作品作りには適正露出は必須ですね。
ネオパン1600スーパープレストでは、明部と暗部に階調が集中する傾向があるようです。
Kentmer100では、1:9希釈でD76の2倍希釈処理よりも微粒子に仕上がりますが、
人物の肌のトーンがのっぺりした感じになってしまいポートレートでは非推奨で、風景写真の処理にお勧めです。
結局、これもT-MAX, 400T-MAXにだけ使うほうが無難かな。
富士だとミクロファインに相当する現像液だと思いますが、現像力はこちらの方が粒状性がやや荒い感じがしました。
なので、通常の使い方ではミクロファインに分があります。
ところが、T-MAXをマイクロドールーXの1:3希釈でやや長め(24℃で12分30秒)現像すると驚くほ肌のトーンが美しいネガが得られることを知りました。
(湘南女性写真研究会でお世話になっている役員の榎本氏から教えていただいきました。ありがとうございました!)
と、喜んでいたのも束の間、今や在庫限り終了とのことで、実際に売っている量販店が見あたらない状態に…
増感現像には御用達の定番現像液です。
中学生だったころ、天体撮影のためにネオパンSSSやトライXをASA800やASA1600(ISOじゃなくてASAと呼んでた!www)に増感したいときに使ったものです。
今は天体撮影のような長時間露光は明らかにデジカメが優位です。
フィルムを使うなんて難行苦行が好きな奇特な趣味人だけでしょう。僕もたまにやってしまいますが…(笑)
まぁ、とにかくスーパープロドールは、わざと粒子の荒れを作品に使いたい人向けなのではないかと思います。
(似たような荒れ画像は自家調合のPQ-FGFでも可能なので、最近は使っていません。)
超軟調現像液として有名なPOTAです。ミニコピーHRフィルムをISO感度12くらいで撮影してPOTAで現像すると、
粒子がまったくわからない。
しかも普通なら白とび黒つぶれする範囲の画像も再現してしまいます!
試しに、神社仏閣や風景を撮ってみたら、大判カメラで撮影したかのような高精細画像が得られました。
でも、モデル撮影で使ったら、被写体ぶれしたカットばかりで、せっかくの高精細の良さが発揮できませんでした。(笑)
とはいえ、ミニコピーHRもとっくに売ってないし、主剤のフェリドンも入手困難。この組み合わせも今や幻ですね。