私の思い・私の怒り
ノー消費税 2006.9 第182号

●産科つぶさないで安心して産める環境を
 山口正子さん
 ( 東京逓信病院・助産師)


お産も収益の対象? 病院にもおしよせる郵政民営化

 日本郵政公社は、2007 年の郵政民営化を前に、全国の逓信病院に対して、診療・看護体制の見直しや、薬剤・検査・事務などを外部委託する「効率化」をすすめています。
 今年3月には東京逓信病院の産科を廃止し、看護師15名を減員することを、組合に提示しました。4月には病院の産科を12 月末で休診にする「お知らせ」がはりだされました。休診の理由は「昨今の少子化傾向をうけ、当院における分娩数は大幅に減少しており、今後も分娩数の増加・収益は見込めない」ということです。
 東京逓信病院では千代田区の出産の2割を扱っており、近くにある警察病院や八千代助産院は区外への移転を決定しており、ここがなくなると、地域の方がお産をするのに遠くまで行かなければなりません。

子育て支援どころか“お産難民”に

 いま、“お産難民”といわれるほど、全国的に産科が減っています。お産するのに前もって産科の近くまでいって宿泊したり、遠隔地まで車で出かけて途中でお産になるなど、危険が高まっています。
 確かに産婦人科の医師は患者さんの診察や手術、分娩があれば昼夜を問わず呼び出されるなど、過重労働です。当院でも3 人の医師が日常業務のほかに、週2 回の当直があり、過密労働です。
 こうした医師の過密労働に加え、採算がとりにくいこと、医療訴訟が多いことなどが産婦人科医師の不足をますます深刻にしています。

正常分娩は助産師に

 助産師は妊娠・分娩・育児について幅広い専門知識と技術を持っている「お産のスペシャリスト」です。医師がいなくても『助設外来』『院内助産所』がやれます。その開設を提案し、産科の存続を要望もしました。しかし、提案は検討されることなく、産科が廃止されようとしているのです。

子育て支援に逆行する産科廃止

 少子化対策が叫ばれるなかで、「効率化」「収益」優先の産科廃止は重大なことです。
 産科が廃止されることは、小児科の診療も影響を受け、縮小されれば、地域住民にとても深刻な問題です。「子育て支援」といいながら、それと逆行するお産や子育ての環境をつぶしているとしか思えません。

消費税の「福祉目的税化」などとんでもない

 お産の費用も高く、自費で40万円以上かかります。若い人は月収を上回る負担がたいへんで、早く退院したいと申し出る人もいます。
 政府は「福祉目的税化」するといって、消費税をまた引き上げようとしていますが、現場ではどんどん福祉が後退させられており、これでよくなるとは思えません。出産は子育ての出発点です。安心して産み育てられる環境をつくるためにも、産科の存続がはかれるよう、労働組合で取り組んでいるところです。
 6月から存続の署名をはじめ、7月末で3000筆を超え、いま1万人目標に取り組んでいます。