華代ちゃんシリーズ


名古屋市営地下鉄鶴舞線・車中


作:MC119



※ 「華代ちゃん」シリーズの詳細については、以下の公式ページを参照して下さい。
http://www.geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan00.html


こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。
 最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。
 報酬ですか?いえ、お金は頂いておりません。お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。
 さて、今回のお客様は…。

「次は、いりなか、いりなか〜」
名古屋市営地下鉄鶴舞線。車内の昼下がり。この車内放送が流れると共に、と、ある男の一団がにわかに緊張がかった声でざわめきだった。

「おい、次だぞ。」
「ホントに行くのか。」
「わざわざオフ会抜け出してきたんだ。今更引き返すなんて、言うなよ。」
「ことあるごとに、発言してきたんだからな。君は。」
「こうして経験者も入れて、一緒に付き合ってやるんだからな。有り難く思えよ。」
「はぁ・・・。でも、私、このチャットで、今向かってる場所のこと、知ったものでして・・・。」
「聞く耳もたんわ!」

 いりなか駅が近付き、電車はやがて減速をはじめた。ブレーキの制動音が響く。

「♪朝早く、目覚めた・・・」
「何、呑気に歌ってんだ。」
「♪・・・あのヤマめざそう・・・」
「やめい!今その歌、シャレになら〜ん!」
「その替え歌、確かに例のメニュー、ネタになってますものね。」
「確かに、過去の遭難者は数知れず・・・。」
「ともかく、やったら甘いんだよなぁ。例のメニュー。」
「酒飲みに、甘いメニューはつらいよ。」
「酒飲みでなくとも、女ならともかく、男にとって、甘いのは苦手でしょ!」

不意に、車両の貫通扉がひらいた。
「お兄ちゃん達、声大きいよ。隣の車両まで聞こえてきたんだから。」
ふと見ると、傍らに、小学生くらいの女の子が一団に寄り添っていた。
「あ、ごめんね。」
「でも、何かお困りのようだったけど。力になるけど。」
その女の子はおもむろに、一同に名刺を配り始めた。

「ココロとカラダの悩み、お受けいたします 真城 華代」
名刺には、こう、記載されていた。

「いや、悩み、っていうほどのことでも・・・。」
「お兄ちゃん達、遭難、とか、結構物騒なこと言ってたでしょ。」
「いや、遭難、は確かに、遭難、だけど。」
「でも、この際、打てるべき手は打っておいたほうが・・・」
「男の人にとって、要は甘いのが苦手だから、遭難するのね。わかったわ、任せてよ。」

「ちょっと待てい!確かその名刺・・・」
一団の一人が急に血相を変えて叫んだが、時、既に遅し。一同は既に身体の変化が始まっていた。そう、胸が盛り上がり始め、ウェストはくびれ・・・。更にご丁寧にも服装まで女物に変わってしまうのに、そう時間はかからなかった。電車が完全に停止したのは、変化が完全に終わった後だった程だから・・・。
「なんか胸が・・・もみもみ・・・。」
「足元、何かすーすーするし・・・。」

「いりなか〜、いりなか〜。」
ドアが開き、女性の一団がホームに降り立った。
「ドアが閉まります。ご注意ください。」
エアーの抜ける音と共に、ステンレスの鋼体が、一団とその少女の間を遮る。
電車は轟音を立てて、後部標識の赤灯が、闇へ消えていった。それを呆然と見送る、その、女性の一団・・・。

「確かに女性は甘いもの好きだけど、これだと遭難する可能性が高くなっちゃったじゃないかぁ!」
「例のメニュー、甘いだけじゃなく、量がやたらとあって、しかも、油っこいですからねぇ。」
「迂闊だった。思考回路が一同、これから向かう先のことで目一杯で、あの名刺の意味に気付くのが遅れたんだ。」
「よく見聞きしてた筈なのに・・・ヤマ、恐るべし!」
「おい。」
「は?」
「そもそも、キミが、しょっちゅう山ネタの発言さえしてなければ、こんなことには、成らなかった筈。」
「アンタが悪い。」
「ここはひとつ、蹴りでも入れんと、気がすまんな。」
「ハイヒールでお仕置きよ!」
一同、「登山」することになった言い出しっぺを責め立て始めた・・・。

 なんと言っても、女性は、甘いものが好きだものね。もちろん華代も、甘いものには目がありませんわよ。今回のお客さんたちが行くって言ってた先にも、きっと甘いものが沢山あるんでしょうね。「遭難」って言葉使ってたけど、それでも、あえて、グループでわざわざ行く位なんだから。すばらしいメニューなんでしょうね。
華代、今日は別の用事があったから、寄れないのが残念です。でも、今度、名古屋にきて、またこの鶴舞線使うことがあったら、途中下車して、行ってみるつもりです。
あ、そろそろ今回私が降りる駅ですね。うっかり乗り過ごすと、この電車、名鉄線に直通してるから、戻るのが大変なので、皆さん、また今度。

[FIN]

追記:一団のやや乱暴な科白は、あくまで「演出」です。「演出」なんだってばぁ・・・。

※作中で、彼ら(彼女ら)が向かっていた先、いわゆる「山」の詳細については、以下のページを参照してください。
http://www.asahi-net.or.jp/~wf5t-hrd/mountain/index.htm
http://www.din.or.jp/~tarota/leaf/na-lep-2.htm
http://member.nifty.ne.jp/tsummer/spa/uta03.htm