Your Song
 - Alice Version -



 迷いでは、人の気持ちは思い通りに歩けないだろう。
 不安でいるだけならば、きっと昨日の自分にも出来る。
 立ち止まっているという事実すら、
 実は認めていなかったのかもしれない。
 走り続けているだけだと思っていたのは、
 空回りする情景に囚われていたからだろうか。
 君の痛みに、ぼくも傷つけられる。
 それでも――――
 迷惑だからやめて欲しい
 とは、云えなかった。
 それが、ぼくの弱さだ。

 
 痛いんだ、苦しいんだ。
 今ならそう、叫ぶことが出来る。
 君を哀しませるかい?
 君を傷つけてしまうかい?
 でも、その方がきっと、ぼくたちの為だ。
 痛いから、苦しいからやめてくれとぼくが呟く分だけ、
 君を哀しませる分だけ、
 ぼくは君を愛してる。
 だから、手を繋ごう。
 哀しい君の唄を聴くのはもう、飽きたんだ。
 だから一緒に、歩き出そう。
 これから先も、ずっと続くんだ。

 
 終わらせないよ。
 終りにならない。
 君はこの先も時折立ち止まり、哀しい唄を思い出すかもしれない。
 繋いだぼくの手の存在を忘れて
 孤独だと、嘆く日が来るかもしれない。
 そんな君に、ぼくはいちいち打ちのめされて傷つくんだ。
 見失いがちな君に、ぼくはきっとまた、文句を言う。
 そして君が、このぼくと手を繋いでいることを思い出してくれたら
 それで幸せ。
 怕くないものがなくなる日なんて、
 永遠にやってこないかもしれない。
 弱さばかりが目立つ君は、
 ずっと何かに怕がっているのかもしれない。
 でも、だからこそ、
 一緒に、歩き出そう。
 暗く長い道のりかもしれない。
 歩くのに時には疲れを感じるかもしれない。
 そんな時は、ふたりで振り返ってみよう。
 こんなに遠くまで歩いてきたんだね。
 そんな風に、二人で確認してみよう。
 多分、少し嬉しくなるだろう。
 多分、歩いてきて良かったと思えるだろう。
 だから、取り合えず今は
 歩き出そう。
 手を繋いで、ふたりで歩き出そう。
 何時か、そんな風に云える時が来るように。
 一緒に、まだ見えない行き先を目指し
 歩き出そう。
 ふたりで唄いながら歩けば、暗い道でも、きっと怕くないよ。
 光が差せば君も気づくだろう。
 この道は、長いけれど真っ直ぐな一本道なんだ。





IN / 2000.04.01 UP/ 2000.04.07 AM 04:07

■COMMENT■

■この詩は、CAMEL BRANDで発行した「Your Song」というお話の冒頭部分で
火村のカメラワークからみた詩と対になる、有栖の詩です。
本当は、本の巻末に載せる予定でしたが…ページオーバーだったので、こんな形でHPのみの掲載となりました。
物語の本当のLASTは、これになります。
本の「Your Song」を読んでいただいた後でこれをご覧になっていただけると意味が分かると思うのですが(笑)。


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