Christmas Carol ワープロのキーを叩く指先がひどくかじかんできていた。ふと気づくと、すっかり夜がふけていた。 仕事を始めたのは確か、正午を少し回った頃だった。既に六、七時間はずっとワープロの前に向かっている事になる。 こんなにも原稿に没頭出来たのは、随分久しぶりの事だった。 どうやら、今夜は随分冷え込んできているらしい。手も足も、ひどく冷たくなっていた。 その事に今まで気づかなかったことの方が不思議なくらいだ。 何か上着を一枚羽織ろう…。有栖がそう思った矢先だった。電話の音が静かな部屋に優しく流れた。 ……そう、その電話の呼び出し音はひどく優しく聴こえたのだ。 多分、気分的な物だと思う。けれど、その時の有栖には確かにそう聴こえた。 余りにも漠然とした直感。しかし、それには確信が在った。この電話は、火村からだと思った。 「はい、有栖川です」 『窓の外、見てみろよ』 挨拶も無く、電話をかけてきた相手はそう云った。思い当たるそんな不躾な物言いをする人物など、ただ一人しかいない。 学生時代から常に有栖の傍にいるこの男。英都大助教授、火村英生その人だけだ。どうやら、有栖の勘は当たったらしい。 「なんやねん、やぶからぼうに」 『いいから、カーテンを開けて外を見てみろよ』 コードレスの子機を左の肩と顎に挟んで、暴君の様に物を言いつけるだけの火村の言葉に応える。 彼からの電話の呼び出しベルがひどく優しく聴こえたのと同じ様に今夜は、不思議とそんな火村にも腹が立たなかった。 「―――― あ……雪や…」 道理で寒い筈だ。まるで塵の様な細かな雪が、深々と降りしきっていた。 『やっぱりそっちでも降ってたか』 ひどく嬉しそうな声が、左の耳に流れ込んで来る。 「なんや君…。雪が降ってきたからて、たったそれだけの為におれに電話かけてきたんか?」 『ああ、そうさ』 からかったつもりだったのに、火村はひどく真剣な声でそう云った。これでは、調子が狂ってしまう。 『何故かな…。雪を見ていたら、随分と懐かしい事を思い出したんだ』 そう云えば、六才まで札幌で暮らしていたとだけ聞かされていた。五、六才になれば、物心はついている。 雪に纏わる思い出のひとつやふたつ、在ってもおかしくはないだろう。その思い出が、楽しいものだったのか、 それとも、辛かった事の方が多かったのか……。有栖は何も聴かされてはいなかった。 敢えて口にしないのだから、自ずから語りたいと思う様な思い出ではないのかもしれない。 自分の過去に触れない火村を、有栖はそんな風に受け止めていた。 『―――― …アリス……?』 何も云わないで受話器を握り締めていたら、珍しく不安げな声で名前を呼ばれた。 一体、どうしてしまったのだろう。本当に…今日はどうかしてる。自分も、そして火村も……。 「火村、今から…逢わへんか?」 余りにも唐突な誘いだと、自分でも充分に承知していた。けれど、どうしても逢いたいと思った。 それはきっと、〃願い〃にも近い痛切な気持ちで……。 『俺が、そっちへ行く』 天候や時間帯を考慮したら、そんな答えが返ってくる筈はない。 けれど、火村は呆気ない程簡単に有栖の申し出を受け入れてくれた。 「火村…ほんまに…今から…?」 『なんだよ、自分から云っておいて。どっちなんだよ。逢うのか?それとも止めるのか?」 「あ…逢う!」 咄嗟にそう答えていた。火村が逢ってくれるというのなら、今すぐにでも。 『そうだな…この雪じゃ車は出せそうにないな』 有栖の必死なひと言を当然だとでも云う様に、軽く受け流された。 まるで独白の様に低い声で大阪までのルートを検討する言葉だけが有栖に伝えられた。 『電車で行く。降り出してから差程時間は経っていないから、例えこの儘降りやまなかったとしても、 今夜中は電車が停まっちまうってことも無いだろうからな』 火村は、随分嬉しそうな声でそう云った。 「じゃ…待ってるから、気をつけて此処まで来るんやで」 『お前じゃあるまいし…。じゃあな、後で』 それで、火村の電話は切れた。 頃合いを見計らって、外出の身繕いをした。二本の傘を携えて…。暖房はそのままに、有栖は自分の部屋を後にした。 † その日は、クリスマス・イヴだった。 火村を駅まで迎えに行く道すがら、有栖はそのことに漸く気づいた。 普段は見過ごしがちな、小さな教会がそこに在る。 寂れた…本当にささやかな教会だった。けれど、今夜ばかりは何時もの雰囲気を凡て脱ぎ捨てていた。 何時もは閉ざされている背の高い観音開きの扉は大きく開かれていた。なにも拒まず、凡ての人を受け入れるような寛大さで、 その扉は大きな翼の様に広く開け放たれている。 扉の横に枯れ木の様に佇んでいた葉の落ち切った樹には、小さな柔らかい光を放つ電球が飾りつけられていた。 小さな光の粒たちが、此処においで…と、恭しく自分を導いている様に思えた。 そんな感覚に、暫し捕らわれた。 開け放たれた扉から、美しい賛美歌の歌声が流れてきていた。 有栖はその時、教会の屋根に何重にも折り重なる白いヴェールを纏わせるように、静かに降り注ぐ白い雪を仰いだ。 ここのところ、ずっと仕事に掛かりきりで、まともに外出などしていなかった。そう云えば、テレビすら見ずに過ごしていた。 何時の間にか、冬はこんなにも深くなっていた。普段起きていることの多い夜の空ですら、見上げるのは久しぶりのことだった。 細かな雪が降りしきる、冬の夜空。澄み渡った冷たい空気が心地好かった。しかし、その冷たさが、人の温みを恋しがらせた。 火村の分の傘を握り締めたまま、有栖は暫しの間、ぼんやりと教会の在るその風景に溶け込んでいた。 教会の優しい明かりが、人々の美しい歌声が、ひどく心を和ませてくれた。それと同時に、何故か無性に人恋しくなった。 それは、とても不思議な感覚だった。 優しい気持ちになってゆく。……けれど、その優しい気持ちを誰かに傾けたい。そんな思いに駆られて行く……。 有栖は特別に宗教を持っている訳ではなかった。それなのに、何故こんな気分になってしまうのだろう。 クリスマス・イヴの小さな教会が在る風景 ――――――。 大凡、現実から遠く掛け離れた幻想的な風景。 教会の建物から洩れて来る柔らかな明かりが眩しすぎて、賛美歌の歌声が美しすぎて、不意に泣き出してしまいそうになる。 余りにも自分からは遠い世界だ。それは幻想のような現実の世界……。 その教会に集う人々は、誰かの為に賛美歌を歌っている。愛する家族と出逢えたこと。愛する人と出逢えたこと。 そして、愛する人と過ごせる日々を神に感謝して、歌い続ける。愛しさと感謝の想いが溢れた歌声。 しかし、お世辞にも上手いと云う訳ではない。中には上手く音を合わせる事の出来ない数人の人が、全体のユニゾンを濁らせていたりもする。 …それでも、とても美しいと思った。人々の優しい気持ちが、そんな風に賛美歌を美しいものに変化させているのだと、有栖は思った。 きっと、此処に集う人々も、自分と差程変わらない生活を送っているはずだ。 忙しい毎日に追われ、殺伐とした気分になる時だってあるだろう。けれど、きっと……。今夜だけは違うのだろう。 多分、恋人同士なのだろう。その時、若い男女が幸せそうな笑顔で有栖の目の前を横切って、教会の中へと入っていった。 ―――――…おれも……。 有栖は心の中で呟いた。 ―――――…おれも、火村を迎えに行こう。 大切にしなければならない人が、自分には存在するから……。 人は独りでは生きては行けない。余りにも単純で、余りにも当たり前なことだけれど、そう思える人が居る事の幸福感を、 その時の有栖は胸が締めつけられるような切なさと共に強く感じた。 クリスマス・イヴの夜。 教会のある風景の中で、その世界に暫し溶けこみながら賛美歌を聴いていて、とても大切な事を改めて思い知らされた気分だった。 ―――――…火村を迎えに行こう……。 忘れていた訳ではないけれど、もう一度、自分に言い聞かせる様に、有栖は心の中でそう唱えた。 大切な人を迎えに行く。とても…とても大切な駅までの道の途中で、その大切さを再確認した。 名残惜しそうに、有栖は教会の風景から目を逸らして踵を返した。 歩き出した一歩目。それで、有栖の歩みは止まってしまった。 伏せていた視線を上げたそこに、大切な人が佇んでいたから……。 やはり、火村は傘を持って来てはいなかった。 髪や肩に、雪が薄く積もっていた。何時から、火村はそうやって立っていたのだろう。 「どうしたんや…こんな所で…」 何故か、気恥ずかしかった。心持ち声が上擦っていた。 駅までの道は一本だけじゃない。この道を有栖が選んだのも、単なる気まぐれだった。 それなのに、此処で火村と逢った。単なる偶然…なのだろうか……。 「お前を…見てた」 「傘、差してたのに…そんなんでおれの後ろ姿やって、君は判ってたんか?」 小走りで駆け寄って、火村の頭の上に自分が差していた傘を翳して、有栖は云った。 「ああ…。判った」 低い小さな声で、火村はそれだけを云った。 「声…掛けてくれたら良かったのに…」 云いながら、有栖は火村の肩に積もった雪を払い落とした。 「なんとなくな…。声を掛けそびれて、ずっとお前のこと見てた」 「……今日は…少し変やな…火村」 「普段のアリス程じゃないさ」 漸く出てきた火村の何時もの皮肉に、有栖は少しほっとした。そんな自分が可笑しかった。 皮肉を云われてほっとしているなんて、やはりどうかしている。 「―――― あ…。これ、君の分の傘や」 掲げている傘とは別に、左手で持っていた傘を火村に差し出した。けれど、彼はそれを受けとろうとはしなかった。 「折角持って来たんやで。いらへんのか?」 ただじっと自分を見下ろす火村に、有栖は焦れてそう云った。 火村は漸く、ポケットの中に入れていた手を出した。しかし―――――― 口許だけで少し微笑って、火村の右手は、傘の柄を持つ有栖の手ごと、そっと握りしめた。 「ち…ちゃうて、火村…っ。おれの手やなくて、お前が取るのは傘の方やっ」 「判ってるって」 有栖の手を握る反対側の手で、火村は傘を受けとった。 そして、火村は握り締めた有栖の左手をその儘自分のポケットに、自分の手と一緒に仕舞い込んでしまう。 「……手、冷たいな」 ポケットの中で有栖のかじかんだ手を握り締めて、ぽつりと火村が呟いた。 火村のコートのポケットの中に納まってしまった自分の手。ポケットの中は温かかった。 でも、繋がれた火村の手は有栖の手と同じくらい冷たくて、暫くは何も云えなかった。 結局、火村は傘を差してはくれなかった。こんな事なら、初めから一本の傘で良かった。 火村のポケットに納まった手とは反対の右側の手で、火村の左肩が雪で濡れない様に、高く掲げ、火村寄りに傾けて傘を差す。 ふたりとも、何故か歩き出せずにその場に佇んでいた。 次第に、重ねた手と手の間から温もりが生まれ始めた。じんわりと、心まで温かくなってくる。 さっき迄は独りだった。……独りずつだった。この場所に火村は居たけれど、独りずつでこの風景を眺めていた。 火村は、何を思っていたのだろう。 有栖は教会とそこへ集まる人々を見ていた。けれど火村は、そういったものに目を奪われていた有栖の後ろ姿を見ていたという。 ……本当に、見ていたのはそれだけなのだろうか……? そう思うと、何故かひどく淋しい思いになった。 ……けれど、今は違う。 今は、火村も有栖も、同じ位置で同じものを見つめていた。 ふたりで、その風景に溶け込んでいた。教会に集う人々を少しだけ羨むように……。 「火村……今日がクリスマス・イヴだって、知ってたんか?」 「アリスの様に日付が判らなくなる様な生活はしてねぇからな」 「今日逢いに来てくれたのはそれが理由……」 「―――― なわけないだろ?俺は無神論者だっつーの」 当たり前な返答が返ってきた。 判っている。自分の思い過ごしだろう。火村には誓う神は無い。 ―――― だから……。 「雪を見ていたら、昔の事を思い出した。そしたら、なんとなくアリスに逢いたくなった」 その声に、何時もの不遜な響きは全く含まれていなかった。 他人が知っている火村のイメージからは多分…大きく掛け離れているであろう、彼の声。ひどく、寂しげに聴こえた。 火村が雪を見て思い出した過去の記憶。それを、有栖は訊ねたりしたくなかった。もしかしたら、とても辛い過去だったかもしれない。 そんなものを思い出してしまったから、独りでいたくないと思ったのかもしれない。 今の火村の心情を、そんな風に感じたから、何も訊ねたりは出来なかった。 けれど……だからこそ、自分に逢いたいと思ってくれた火村の気持ちが嬉しかった。 ただ、それだけで充分だと思った。 思い出して、独りでは居られなくなった過去の記憶を持っていたとしても、彼が嫌いな彼の過去ごと、今の火村を愛しているから……。 「火村…」 火村のポケットの中で繋いだ手に力を僅かに込めて、握り締められていた彼の手を、有栖は握り返した。 「なんだよ」 火村も、教会から洩れる淡い明かりを見つめていた。 「君が…好きやから…」 「…………」 なにも答えてくれない火村。教会の明かりを見つめる火村の目を見つめながら、有栖は繰り返した。 「君が好きやから…」 ふと、火村が微笑った。視線はその儘に、火村は微笑った。とても優しい表情で……。 「あそこは、俺の入れない場所だな。……でも、お前は違う」 寂しそうな声だった。 泣きそうになるのを堪えて、有栖は繰り返す。 「君が好きや……。何処にもいけないなら、おれもずっと此処にいる」 「好き好んで…此処に居るんだよ、俺は……」 「判ってる……」 有栖よりももっと…火村はその風景を見つめていた。羨むように、称えるように ―――――。 「おれも自分で決めてるんや。君が好きやから、君の傍にいる」 あの場所に憧れる自分は確かに居た。けれど……。 「…君の傍に居たいんや。……そう、決めたんや」 「―――――…うん……」 小さく、火村が頷いた。それだけで、嬉しくて涙が溢れた。 何にも変えられない尊いものは、輝くあの場所には無いと知っているから……。 それを望まない火村は、此処にしかいない――――――。 「君の嫌いな君も、全部おれは好きやから……」 「…………」 「全部判ってるから……判ってなくても、それでも好きなんや……」 「……うん」 「君を…ずっと抱いてるから」 「…………」 「だから、君も…おれをずっと抱いてるんや」 「―――― ああ…」 「なにも云わなくてええんや…」 「……ああ」 「黙っててもええから…」 「……うん…」 「おれが…こんなにも君のこと好きやって思ってる気持ち…君はほんまに解ってるんか…?」 「――――― 判ってるさ、アリス」 まるで違う世界を見つめていたような火村の瞳が、漸く有栖に向けられた。 「勿論、判ってる……」 繰り返し、火村はそう云った。何時もはそんな事、決して口にしない火村が ―――――。 でも、全然足りない。 何度云われたって、全然足りない。 或いは、言葉にしてそれを聴いた瞬間から、これまで以上に不安になってしまったのかもしれない。 もっと、欲張りになってしまいそうになる。 賛美歌が、心に滲みる。 火村の唱えている彼の持論を、凡て鵜呑みになど出来ない。 それは、彼が彼で在る為に大切なそれで、それと同じように、自分が自分で在るために、 どうしても譲れないものだから……。 けれど、彼があの眩しい場所へ入れないというのなら、自分にもそれは要らない場所になる。 火村の傍にいたいから、火村の隣が自分の居場所だと思うから……。 それでも、神様はいると…その時、有栖は思った。 火村に聞かせたら呆れられるかもしれないけれど、クリスマス・イヴの奇跡は今この場所に舞い降りているから。 火村と出逢ったこと。火村と一緒に生きていること。火村を愛していること……。 凡てが尊い奇跡。愛しい現実。 万に一つの偶然も凡てが必然で、そのたったひとつが欠けていたとしたら、或いは、火村と出逢えなかったかもしれないという恐怖。 だから、今この場所で眩しい程の風景をふたりで見ている自分たちが在ること自体が、奇跡……愛しい奇跡 ―――――。 「そろそろ…行くか」 火村が、静かな声でそう云った。 「うん」 クリスマスキャロルを聴きながら、ふたりは歩き出した。 凡てはこのポケットの中に納まっている。繋いだままの手から、温もりが伝わって来る。 不安は在るけれど、この温もりは本物だから…。なにも怖くない。冬の寒さも、ふたりでいる温かさを、こんなにもはっきりと教えてくれる。 何時もよりもずっと素直な気持ちで、火村に思いを伝えた。何度も何度も、好きだと云った。 火村のことを思うと、愛しさと同じだけの不安を抱いてしまう。……けれど、〃判っている〃と云ってくれた火村の言葉を信じよう。 初めて云ってくれた言葉を……信じよう。 これも…クリスマス・イヴの奇跡なのだろうか。 歩き出したふたりを見送る様に、賛美歌は続いていた。 「きっと…宗教とか関係なく、クリスマスってのは特別な日なんや」 火村のコートのポケットの中で手を繋いだまま、有栖は小さく囁いた。 「どうしてやろう…。今日だけは、何時もは素通りしてしまう〃優しさ〃をいっぱい見つけてしまうんや。 何時もよりずっと多く…火村が大切やって……誰かが気づかさせてくれるんや」 前を向いて歩いていた火村が、背中越しに振り返った。 「……そうか」 嬉しそうな、照れ臭そうな…普段は見せない表情で優しく微笑った。 もう、何も話さなくてもいい。 云いたい事は全部伝えたから……。 後は火村に、繋いだこの手を…ずっと離さないでいて貰うだけ。火村のその手を、ずっと離さないでいるだけでいい。 二人は黙って歩き続けた。 静かに、雪の中を歩き続けた。 温かい、有栖のマンションまで……。 そして、ふたりが一緒に歩ける道を ――――――。 ずっと、こうやって手を繋いで歩いていこう……。 声には出さなかった。けれど、きっと伝わっているはずだから……。 クリスマス・イヴはそろそろ幕を閉じる。 イエス・キリストの降誕祭前日のイルミネーション。その光に照らされた雪たちが、キラキラと輝きながら降り注いでいた。 深々と降り積もる雪の音が…聴こえる様な気がした。 それは、新しく訪れようとしている、火村と共に在る次の年の足音にも聴こえた。 ―――― 新しい年も、火村と共に過ごせます様に……。 神と、大切な人に…有栖は祈った。 ―――― 一緒に迎える新しい年が、幸せなものでありますように……。 火村の為に……。自分も幸せに成りたかった。 賛美歌……。神を称える賛美の歌――――――。 教会からの歌声は、もう聴こえてこない。 それでも、火村と有栖はふたりで歩き続けた。 凡ての願いは、彼のポケットの中に……。 繋いだ、この手と共に――――――― 。 【END】 Up1998.11.29.AM 1:40 Rewrite Up 2000.12.24.AM 1:58 |