手榴弾・擲弾・爆雷等−3

 


★試製改造手榴弾

 「支那事変」下で前線での手榴弾不足を補うべく不急の策として、制式を外された「壺型手榴弾」のストックに改造を施して急遽作成された曳火手榴弾である。

 改造にあたつては「壺型手榴弾」のうち弾体に破片効果用の亀裂溝のない形の手榴弾の頭部に従来まであった「著発信管」を、マッチヘッド式の「摩擦点火式曳火信管」に取り替え、また弾体体部に付随していた「尾」を取り去って携帯用のリングを付けたものである。

 使用にあたってはゴムの「封帯」と弾体頭部の「蓋」を取り外した後、蓋内側にあるマッチの擦板の形状をした「摩擦板」で、信管頭部の摩擦部分を擦って点火させた後に投擲する。

 この手榴弾は名称こそ「試製」がついていたが、実際は前線での手榴弾不足により多数が増加装備として戦闘部隊に送られ、「壺型手榴弾」の在庫がなくなる昭和18年ごろまで支那大陸や大東亜戦域で広く使用された。補給は20発入りの木製弾薬箱で行われる。

 

 

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試製改造手榴弾

 

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試製改造手榴弾

 

 

★試製改造手榴弾データー

 全  長      131ミリ

 直  径      46.3ミリ

 全備重量     480グラム

 炸 薬 量    茶褐薬 30グラム

 信  管      摩擦式曳火信管

 信管延期秒時  4−5秒

 威力半径     約3メートル


★九七式手榴弾

 「支那事変」による手榴弾戦の激化によって、近接戦において「手榴弾」の投擲が兵員各自の判断によって使用される機会が増加した他、従来「89式擲弾筒」使用のために長い時限秒時を設けていた「九一式手榴弾」を投擲した場合では、発火後に早く投げすぎると敵に投げ返されたり、発火後に延期秒時を調整してから投げるにしてはタイミングを失うことが多発するなど、手投専用の手榴弾を早急に整備する必要が生まれたため、急遽開発がなされた手榴弾であり、昭和12年8月に「九七式手榴弾」の名称で制式採用された。

 この「手榴弾」の基本構造は従来の「九一式曳火手榴弾」と同一で、「茶褐薬」65グラムを収めた鋳鉄製の「弾体」に延期秒時4.5秒の「曳火手榴弾九七式信管」が取り付けられており、従来の国軍の基幹手榴弾で「延期秒時」の長い「九一式曳火手榴弾」との誤用を防ぐために「延期秒時4.5秒」と書かれた「使用法伝書」が「弾体」底面に貼付されている。

 

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九七式手榴弾

 

 

★九七式手榴弾データー

  全  長      98ミリ

  直  径      49.8ミリ

  全備重量     445グラム

  炸 薬 量     茶褐薬 65グラム

  信  管      曳火手榴弾九七式信管

  信管延期秒時   4−5秒

  威力半径      約8メートル


★試製軽量手榴弾

 「九七式手榴弾」の生産性をより向上させることで、前線での膨大な手榴弾需要に応えるとともに、手榴弾自体の重量を軽減させて個人の携帯弾数の向上を目的に研究が進められた手榴弾である。

 重量軽減に伴う爆発威力の低下を補うため、弾体の肉厚を薄くして炸薬量を「九七式手榴弾」の65グラムより18グラム多い、83グラムを収め、信管には「九七式手榴弾」と同一のものを使用した。

 この手榴弾は試験の結果満足のいける結果を得たが、別途に研究・開発の進められていた「九九式手榴弾」の方が生産性・性能に勝る点が多かったために採用を見送られた。

 

 

写真・図版無し

 

★試製軽量手榴弾データー

 全  長     93ミリ

 直  径     43.6ミリ

 全備重量    319グラム

 炸 薬 量    茶褐薬 83グラム

 信  管      曳火手榴弾九七式信管

 信管延期秒時  4−5秒


★ 九八式柄付手榴弾−甲

 国軍手榴弾史上初の「柄付手榴弾」で、信管の発火方式もドイツの柄付手榴弾(「1929年式」等)と同様の「摩擦門管引抜式」を採用している。

 この手榴弾の開発の経緯には、「支那事変」や「欧州大戦」での柄付手榴弾の威力・性能に軍が刺激されたことはもちろんであるが、他に生産の簡易性や、大量に動員された兵員に対しても取り扱いが簡単で高性能であることや、体力的に他国に劣る日本人でも柄付のために大きな投擲距離が得られるために研究・採用されたものである。

 炸薬を収めた鋳鉄製の弾体と、信管を収めた中空の木柄より成り立っており、「作動環」を引き抜くことで「信管」は「発火」・「作動」し4秒の「延期秒時」の後に爆薬が爆発し、炸薬を炸裂させる仕組みである。

 使用にあたっては「柄」の底部にある「蓋」を外し、「作動環」を右手小指にかけたま投擲するか、「作動環」を引き抜いて発火の後に投擲する。

 配備は昭和14〜15年頃より関東軍の現役兵を核とする装備優良部隊で開始されたほか、大東亜戦争でも新設の装備優良部隊で多用され、末期では本土防衛軍にも多数が整備された。

 

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九八式柄付手榴弾−甲

 

 

★九八式柄付手榴弾−甲データー

 全  長      201.9ミリ

 直  径      50ミリ

 全備重量     560グラム

 炸 薬 量     黄色薬 78グラム

 信  管      摩擦門管式曳火信管

 信管延期秒時  4秒

 威力半径     約7メートル


★ 九八式柄付手榴弾−乙

 旧式の「壺型著発手榴弾」は訓練用のほか、前述「試製改造手榴弾」の様に改造を施して実戦に使用されたが、それ以外に柄を取り付けて「柄付手榴弾」として使用されたものが存在する。

 この「九八式柄付手榴弾−乙」は旧式の「著発手榴弾」のうち、「弾体」に破片効果用の溝のないものを「柄付手榴弾」に改造したもので、弾体頭部にあった「著発信管」を取り除き「信管孔」を「木栓」で密封し、「弾体」内に新たに引抜式の「摩擦門管式曳火信管」を取り付け、「弾体」底部に中空の「木製柄」を取り付けたものである。この「九八式柄付手榴弾−乙」は大陸の第二線警備部隊に多数が配備され、「旧式手榴弾」の在庫がなくなるまで「治安戦」等で使用された。

 使用方法は「九八式柄付手榴弾−甲」と同様で、「柄」の底部の「蓋」を取り外し「引紐」に結びつけられている「環」を指に通した後に投擲するか、「環」を引き抜いて点火した後に投擲する。

 

 

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九八式柄付手榴弾−乙

 

 

★九八式柄付手榴弾−乙データー

 全  長      207.4ミリ

 直  径      45ミリ

 全備重量     530グラム

 炸 薬 量     黄色薬 30グラム

 信  管      摩擦門管式曳火信管

 信管延期秒時   4秒

 威力半径      約3メートル


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