その孫娘が毎日学校から宿題を持って帰る。算数の計算ドリルに漢字ドリル、そして音読。
その日も夕方、オレがパソコンでCG作ってるところへ国語の教科書もってやって来た。そして読み始めたのが「ちいちゃんのかげおくり」だった。 いくら歳取って涙もろくなったとは言え、孫娘が読む小学校の国語の教科書で涙が出るなんぞ、生まれて初めてだぜ・・・^^;。
それは今から六十数年前、太平洋戦争が終わる少し前の話だ。 「かげおくり」をした。 その後、ちいちゃんはお兄ちゃんと「かげおくり」をして遊ぶようになったが、段々空襲が激しくなってできなくなった。そしてある夜、ちいちゃんが住ん でる町にも焼夷弾が沢山落ちて町中が火の海になった。 ちいちゃんはお母さんとお兄ちゃんと三人で逃げたが、途中お兄ちゃんがケガをしてお母さんとはぐれてしまった。ちいちゃんは親切なおじさんに助けら れて、橋の下で大勢の人達と一緒に一晩過ごしたが、お母さんとお兄ちゃんには会えなかった。 次の日、偶然近所のおばさんと出会い、一緒に手を引かれて焼け落ちた我が家に帰ってみたが、お母さん達は帰ってはいなかった。 その日からちいちゃんは一人ぽっちで、近くのこわれかけた防空壕で次の日もそして次の日も、雑嚢の中の少しのホシイイをかじりながら、お母さんと お兄ちゃんの帰りを待った・・・。でも二人は戻らなかった。 そして三日目、ちいちゃんは青い空から降ってくるお父さんやお母さん、お兄ちゃんの「みんなでかげおくりをやろう」と言う声に導かれて、笑いながら 青い空へ昇って行った。 こうして一つの小さな命が青い空に消えました・・・。夏のある晴れた日のことでした。 ザッとこんな話だが、悲しい話だぜ・・・。 小学三年生の国語の教科書に出てくるお話です。一度みんなに読んで貰いたい・・・。
ちいちゃんのかげおくり あまんきみこ 作 |