格納庫
2012.10.11(久しぶりに行ってみた・・・
奈多の海岸)
今日も気持ちのイイ秋の朝で、トライクで走りたくなった。さてさて・・・どこまで走ろうかと考えてみたが近場で行きたいところが
思い浮かばない・・・(今日は行き当たりバッタリで走ってみようか・・・(笑))
午前9時30分、V-MAXのエンジン始動(ギュルギュル・ブォ-ン)セル一発で今日も調子が良いぞぉ・・・、近頃は走ると涼しさを
通り越して少し寒くなって来たので本日は革のフライトジャケットで出撃・・・。
取り敢えず国道3号を今日は西へ、福岡市方面へ機首を向ける。相変わらず車は多いが、さてどこで国道3号を離脱するか・・・。
二十分ほど走った時、フッと二十数年前パラグライダーを始めた頃にいつもかよった奈多の海岸(海の中道の手前)に
行ってみたくなった。(懐かしい・・・二十年以上行ってないなぁ・・・どうなってるだろう・・・)
あれは俺が四十チョイ前、岩登りをやってた頃、登った山の上から何とか楽して下山する方法は無いかと、(そんなの無いンだよぉ)
本気で考えてた時に偶然テレビで外国の登山家がスイスアルプスの下山にパラグライダーを使ってるのを見た。
「これだぁ!!・・・」と、俺はその時本気で夢の下山方法を見つけたと思ったんだよなぁ・・・。(笑)
(ホント、バカだよねぇ・・・高所恐怖症なのに・・・^^;)
それからが大変さぁ・・・。福岡中のパラグライダースクールを探したねぇ。あったよ・・・確か3ヶ月の土日初心者コースだったかな?
そのスクールの練習場所が奈多の海岸だったんだ。駐車場から海岸沿いの松林を10分程歩くと高さ30mくらいの砂丘の上に出る。
そこがテイクオフで30m下の砂浜へランディングするんだ。少々へマしても砂浜だからケガしなくて良かったな・・・。^^
しかし、若いインストラクターからクソミソに言われるのにはいつも頭に来てたけど・・・・^^;
そんな奈多の海岸へ2年間通い詰めてやっとパイロット証を取った。(2年目からは時々高い山へ飛びに行くこともあったが・・・)
今でも忘れる事の出来ないJ.H.Fパイロット技能証の試験が北九州市の皿倉山であったんだ。標高622mの山頂からテイクオフして
都市高速のトンネルの上にある30m四方のランディング場目指して自分の判断で飛行し、正確に着陸しないと合格しないんだ。
上空から見るとランディング場が10円玉くらいにしか見えないんだぜぇ・・・。(怖えぇ・・・(涙))そこを午前と午後2回飛ぶんだ。
俺は運良く2回ともドンピシャリにランディングして何とか合格した。(2年でパイロットになるのは早い方だったんだぜぇ・・・。(笑))

パイロットになってからは気の合う仲間達とクラブを作り、あちこちの山に飛びに行った。そして、すっかり奈多の海岸にはご無沙汰
だったが、ある時、人づてに奈多が飛べなくなるって噂を聞いたんだ。奈多の練習場は国の海岸保全地区の一部で国に無許可でパラ
グライダーショップが使ってたらしくて近いうちに立ち入り禁止になるらしい。
その影響だったんだろうか、数年後にショップも潰れてしまい奈多のことはみんなからすっかり忘れ去られてしまった・・・。
(しかし、懐かしい思いは今でも残っている。一番最初に空を飛んだ場所だからな・・・)
「よし、奈多の海岸に行ってみよう!!。」二十年以上時が経って随分変わってるだろうが・・・。
いつもかよってた道も随分変わった。あの頃は一車線有るか無しかの道路だったが、今は四車線の立派な幹線道路になってる。
周りの景色も田んぼと畑ばかりだったのに今は殆ど住宅団地に変わって昔の面影はない・・・。
(当たり前だよなぁ・・・俺もこんなに歳を取ったんだから・・・^^;)
しかし、海岸通りに入ると殆ど昔のまんまの懐かしい風景が残っていた。しばらく走ると右手にいつも車を止めてた空き地が見えて
きた。すぐ脇にある野球場もそのままだ・・・。^^ (懐かしい・・・ここは昔のままだ。
^^)
昔はパラ仲間の車でいっぱいだったんだが、今日は一台も車は止まっていない。トライクをその空き地に止めて野球場の脇を
昔と同じように歩いて行く。昔と違うのはパラグライダーとハーネスなどの装備が入った10kg以上の重いリュックを担いでいない
ことだけだ。
150mほど行くと左へ登る分かれ道があるはず・・・。「あったぞ・・・^^ 変わってないな・・・。」 しかし、そこを登って行くと・・・
「あれぇ〜??こんな建物有ったかなぁ・・・?」 そこには昔は無かった柵で囲まれたNTTの通信施設が建っていた。
砂丘へ出る道も消えて、代わりに3mくらいの林道みたいな道が通信施設の前を海岸と平行するように続いている。
「こんな道も無かったよなぁ」と、200m程道なりに歩きながら辺りを見回すと、昔は綺麗な松林で見通しも随分良かったのに、
今は枯れた松が多くて藪が生い茂り荒れ果てている。(変わったなぁ・・・)
海岸の砂丘へ出るにはこの藪を突っ切って行くしかないのか?しかし、人が入った形跡は全くない。ここは一旦分かれ道まで引き
返してもう一度考えよう。もしかしたら道を間違ったのかも知れない。
10分程掛かって分かれ道へ戻った。さて、今度は真っ直ぐ行ってみようと海岸の方へ歩き出す。確かに海へ近づいてはいるが
荒れた道は次第に右へ回り込んで逆方向へと続いて行く。「あれ・・・?これは違うぞ」と、またまた引き返して分かれ道まで戻る。
もうかれこれ30分ほどうろついている。いい加減諦めて帰ろうかとも思うんだが、せっかく来たのに諦めるのはシャクだぁ・・・。
もう一度だけ分かれ道に入り、行けるところまで行こうと歩き出す。NTT施設の前を過ぎてしばらくすると左手に車の通る道が
見えてきた。「そうだ!!、何度か砂丘からの帰りにあの道に出て駐車場まで歩いた覚えがある」。
昔かよった道とは違うが確実に海岸砂丘へ近づいてる感じだ。少し進むと正面右手にやや開けた丘がある、砂も少し見えている。
そこを登ってみようと近づいて行くと人が歩いた形跡がある・・・。丘を登り切った途端、目の前がパッと開けて海が飛び込んできた。
そこは俺たちがいつも飛び立っていたテイクオフより、やや左に寄った岩棚のような場所だった。昔はもっと広くてパラの立ち上げの
練習をここでよくやったものだったが随分地形が変わって狭くなっている・・・。右手のテイクオフがあった付近には柵に囲まれた松が
沢山植わっていて、見覚えのある国の掲示版が雨露に汚れて立っていた。(この下でよく昼飯のおにぎりを喰ったもんだ・・・)
30m程下に見える海岸からの高さは変わっていないように思えるが、随分砂丘が浸食されて丘全体が後退して狭くなってるようだ。
テイクオフがあった付近から先は灌木と藪に覆われて行けそうにもない。俺が思ってた以上に奈多は変わっていた・・・。
しかし、砂丘の上から見る海と空は二十数年前の懐かしい色とニオイで、この丘を何度も何度も登った苦しくて楽しかった思い出が
一度によみがえってきた。
「来て良かったな」と少し嬉しくなって、もと来た道をゆっくり俺は引き返して行った・・・。

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