メビウスリンクの時代背景&STORY
銀河史(西暦から銀河標準暦へ)
西暦2022年に完成した高位次元波動変換理論は、光速と時間によって絶対的な拘束をうけている通常次元から高位の次元への扉を開いた。 西暦2039年の太陽系木星軌道上で行われたハイパードライブ実験は、高位次元波動変換理論の登場によって飛躍的に発展した量子力学が勝利した瞬間でもあった。それまで、お伽話でしかなかった恒星世界への航行手段が実用化され、人類は広大な恒星世界へとひろがっていった。
ハイパードライブの実用化は、それまで自分たちのすむ惑星周辺という小さな庭でしか活動していなかった人類社会に、光速ですら数年かかる広大なそして無限の空間に広がる新しい社会システムの構築という問題を提起した。 最初に誕生した恒星間国家は、自らの出発点である地球を中心とした「地球連邦」だった。地球上の多くの国家が参加、成立していた地球連邦政府がそのまま恒星間社会にひろげられたシステムである。 しかし、この政治社会システムは、通信交通手段が整備された惑星上の国家連合が起源であるため、通信手段ですら困難な恒星間社会では成立当初から距離という物理的な問題の前に機能不全に陥りつつあった。 中央政府である地球の植民星系に対する強硬な政策などにより、やがて大規模な恒星間戦争へと突入、最初の恒星間国家は急速に崩壊へと加速していった。
太陽系から8.6光年の距離にある連星恒星系シリウス。太陽系との間には巨大なダークマターの壁が存在するため直通の航路が設定できないため、地球からは観測しやすい恒星系でありながら実際に人類が到達できたのは、恒星間へ進出を開始してから数10年が経過していた。 しかし、この地理的な条件がシリウスを恒星間社会の中で最も特徴的な地位に押し上げていった。 地球から観測しやすい恒星系でありながら、地球からの意思がもっとも届きにくいシリウスは、強硬な植民星系政策により地球軍による激しい攻撃を受けた。 だが、地球からの補給線が容易に得られる距離ではなかったため、事態の長期化によって物資が乏しくなってきた地球軍は、次第に激しさを増してきたシリウスの攻勢によって撤退を余儀なくされた。 この瞬間、シリウスは歴史の表舞台に立つことになる。 銀河標準暦00092。シリウスを中心として対地球連邦を標榜する植民星系国家の集合体が結成された。シリウス連邦の誕生である。それは、地球圏以外を盟主とする初めての恒星間国家であった。 地球連邦との開戦当初は、軍事面で劣るシリウス側が不利な状況が続いたが、やがてその差は縮まり、シリウス軍提督マリア=ファムの登場により形勢は完全に逆転することになる。 銀河標準暦00115。地球は、最後の審判が下された。当時の軍事的な中枢機能があった北米大陸シャイアンマウンテン、アジア大陸テンシャン山脈などの地下施設に対して衛星軌道上からの猛烈な攻撃が加えられた。軍事力を完全に破壊された地球連邦はついに崩壊し地球はシリウス連邦の管理下に置かれた。
地球連邦崩壊後、わずか2年でシリウス連邦は存亡の危機に直面した。もともと対地球というスローガンのもとに様々な利害関係を無視して成立していた連邦国家だったため、地球というノリがなくなった瞬間、権力闘争が表面化し連邦システムは機能不全に陥った。 急激に発展した組織は、その分、急速に悲惨な権力闘争の坩堝と変貌し、多くの血が全銀河の支配者という座をめぐってながされた。 政治の激変は、多くの人々に強い不信感をあたえ、そうした状況は軍の強硬派に格好の口実を与える結果となった。 銀河標準暦00117。軍強硬派は、シリウス連邦の主要施設を急襲、銀河規模の大規模なクーデターを成功させた。軍は、速やかに強力な政治力を発揮するために当時の軍最高責任者を「第1市民」として指名、軍事力を背景とした帝政へと移行した。 銀河最強の覇権国家、シリウス帝国誕生の瞬間であった。
地球連邦の大規模な艦隊戦力を知略によって瓦解させたシリウス連邦の天才提督マリア=ファムは、シリウス帝国成立によって始まった「シリウスの弾圧」と呼ばれる狂気の嵐に巻き込まれつつあった。 マリア=ファムは、シリウス連邦最後の提督として新政権である帝国とは決別、新たなる道を歩むことにした。 銀河標準暦00118、6月。地球連邦の盟主であった地球の地に降り立ったマリア=ファムの姿があった。シリウス動乱の影響で、事実上シリウスの支配下から脱していた地球に新しい国家システムを構築、対帝国の拠点である自由都市連邦の構築に着手した。 銀河標準暦00120。マリア=ファムは、麾下の艦隊によって帝国の攻勢に対処しつつ、新恒星間国家=自由都市連邦を成立させた。 動乱の混乱によって低下していたとはいえ、シリウス帝国の軍事力は、新国家の比ではなかった。マリア=ファムは、圧倒的な軍事力の差を埋めるために効率的な艦隊運用を行える高速ハイパードライブネットワークなど、新しい戦略システムの構築をすすめた。本格的な衝突が始まるまでに絶対防衛ラインの完成が都市連邦の最初の課題となった。
銀河標準暦00491。帝国軍は、巨大なハイパードライブを装備した移動機動要塞「ネメシス」をもって、連邦の絶対防衛ライン「マリア=ライン」の突破を計画した。この戦いは、連邦、帝国双方にとって大きな歴史の転換点となった。 圧倒的な兵力を誇っていた帝国は、この戦いに莫大な戦力と戦費を投じ、連邦の防衛ラインを一気に突破する作戦だった。これは、帝国の基本戦略構想を最大限に拡大したもので、大兵力による短期決戦が基本であった。 「ネメシス」会戦の序盤では、連邦軍は、圧倒的な戦力によって多方面に電撃作戦を展開する帝国軍の前に機動艦隊群を3艦隊も失うなど苦戦を強いられていた。要塞「ネメシス」は、帝国軍最前線として連邦軍を撃破していた。 連邦軍は、ネメシスの侵攻をとめるために開発中であったマイクロブラックホールミサイルを投入、ネメシスをシュバルツシルトのワナに誘い込む作戦を採った。ネメシス攻略作戦は、両軍の稼働艦艇の7割近くが参加するという、それまでの会戦史でも例を見ないほどの大規模な戦いとなった。 連邦軍は、3機の実験戦闘艦スーパーアルテミスを会戦最終局面に投入。ブラックホールによって破壊されたネメシスの防御フィールドリング内部に突入に成功し、ネメシスを破壊することに成功した。 この戦いにより連邦、帝国の両軍は、多大な犠牲を払い、両国の国内事情にも大きく影響を与えた。特に帝国は、この戦いにより国内情勢が不安定になり、ゆるやかな崩壊への道を歩み始めることになる。